「知」の結集 ゆびすいコラム

2009.02.09

事業承継税制 ?その3?(まとめ)

制度の利用にあたって(再確認)  納税猶予制度を利用するにあたっては、1)株式の生前一括贈与かつ先代経営者が引退、又は、2)株式の相続かつ後継者が代表者になること、のいずれかの方式で事業承継を行なうことが要件です。また事前に、誰が後継者でいつどのように株式を承継させるかという計画的取組を行なっていますよ、という経済産業大臣の確認を得ることが必要です。

さらに納税猶予後は、事業の継続と株式の保有を継続することが要件であり、5年以内にリストラを行なったり、代表者が交代したり、株式を譲渡してしまうと納税猶予が打切られてしまいます。さらには、株式を担保提供することも必要です。

 特に事業継続要件を満たし続けることは今後の経済状況を考えると非常に困難な場面も予想されます。

事業継続ができなかったら  もし、業績が悪化し従業員の8割雇用を維持できなくなり、納税猶予が打切られるとどうなるのでしょうか。

 打切られた猶予額を年3.6%の利子税と共に本税を納めないといけないのですが、もし後継者が資力を失っていると会社の株式が差し押さえられます。上記のとおり、国に株式を担保提供してあるからです。

 会社にこれといった財産がなかったらどうなるでしょう。他の相続人には連帯納税義務があることから、数年後突然、滞納税額の督促状が届くことも考えられます。

本当に利用してよい制度なのか  国としては、もともと払うべき税金が猶予されてたんだから仕方ありませんね、ということです。

 業績が悪化して事業を続けられなくなったからいって、納税猶予打ち切りが見逃してもらえることはありません(ただし例外として破産や特別精算に限っては、納税猶予額は免除してもらえます)。

   むしろもともと納税猶予などすべき会社ではなかったということになり、当然税金は支払ってくださいね、となってしまいます。

 事業承継制度を利用するかどうかは、先代経営者と後継者だけでなく、他の相続人や将来の経営経営まで見据えた慎重な判断が求められます。

(税理士:白井一馬)