「知」の結集 ゆびすいコラム

2014.10.22

権利書を失くしてしまったときは?

司法書士の仕事をしていると、年に数回は 「権利書が見つからないんだけど、どうすればいいの?」 という問い合わせを受けます。

それと同時によくされるご質問が 「権利書はどうやったら再発行してもらえますか?」 「権利書を失くすともう家を売ることはできないのですか?」 というご質問です。

先日、久々にそのお問い合わせを受けましたので、今日は権利書を失くしてしまったときのことについて書かせていただきます。

権利書は昔から「命の次に大切なもの」とよく言われてきました。

ですから、誰にも見つからないところに大切に片づけてしまい、引っ越しなどの際にどこへいってしまったか分からなくなってしまう、というのはよく聞くお話です。

そもそも権利書とは何のための書類かというと、土地や建物を売却するときや、土地や建物に担保を付けたりする際に、法務局へ提出しなければならない書類です。正式名称は「登記済証」です。

現在は、登記の電子化に対応するため、権利書は「登記識別情報」という12桁の暗証番号のようなものに姿を変えました。

土地や建物の権利を取得した登記を受けたときは、「登記識別情報通知書」が、従来の権利書に代わるものとして交付されることになっています。

ただし、登記が電子化された現在でも、従来の権利書があるものは、従来の権利書を使用することになっていますので、従来の権利書は引続き登記申請に必要な書類です。

では、「権利書」や「登記識別情報通知書」を失くしてしまったときはどうすればよいのでしょうか? まず、権利書や登記識別情報通知書は、再発行してもらうことはできません。発行は登記をしたときの一度きりです。

一度失くしてしまったら、その物件の権利を持っている以上、ずっと権利書が無い状態となってしまいます。

では、権利書を失くすともうその物件を売ったり担保を付けたりすることできなくなるのかというと、そうではありません。

権利書を失くしたときの代替手段は、きちんと用意されています。

権利書(登記識別情報通知書)を法務局に提出することが出来ない場合は、 ①司法書士等が本人確認をして作成する「本人確認情報」を提出する ②登記申請後、登記所から本人限定受取郵便を送ってもらい、それを法務局へ返送する というどちらかの本人確認の手続きを経ることによって、登記申請が可能となります。

「それじゃあ権利書はそんなに大切なものではないんだ」 と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、上記①は本人確認情報作成のために余計な費用がかかりますし、②は代金支払と登記書類の受渡しの同時決済が求められる不動産取引ではまず採用されません。

どちらにせよ、①も②も手間がかかってしまいます。

また、第三者に悪用される心配も無いわけではありません。

「登記識別情報」は、紛失してしまった場合、第三者による悪用を防ぐためその情報を「失効」させることができます。

一度失効してしまうと二度と復活できないので、再度見つかる可能性があるときは慎重にしなければなりませんが、第三者の手に渡ってしまう可能性がある場合は、失効の手続きを検討する必要があります。

このように、権利書は失くしてしまっても代わりの手段が用意されていますが、いざ権利書が必要な場面では手間や余分な費用がかかってしまいます。

権利書は覚えておけるところに大切に保管してくださいね。

司法書士法人ゆびすい登記センター
司法書士 加賀爪 優作