「知」の結集 ゆびすいコラム

2014.12.24

若年者の離職率

お客様から、若い人の定着率が悪いという話をよく耳にします。

ここ10年ほど若年者の離職率が3年で3割という状態が続いています。

その背景には、インターネット等の普及、就職支援会社の増加等により、以前よりも転職がし易くなったことが考えられますが、転職する理由にやや問題があるような話を聞くことがあります。

転職する理由は人それぞれ、様々な事情があり、個人的には転職自体が悪いこととは決して思いませんが、なかにはそんな理由で辞めてしまうの?と思うようなケースもあります。

ある幼稚園のケースでは、若手の職員に学級担任を任せたところ、数か月後に退職願が出され、その理由を聞くと、責任が重いのが嫌だったからと。

また別のケースでは、正規職員にならないかと相談したところ、非常勤のままの方が大変じゃないからいいと。

これは稀なケースで、多くの場合は違った理由で退職していることと思いますが、、このような責任ある立場を任されることから、逃げるように辞めていく話を聞くと、なんだか悲しい気持ちになります。

話しは変わりますが、最近私が読んだ本で、城山三郎氏の『打たれ強く生きる』といった本があります。

その中にこんな話がありました。

(以下引用) 「 新人の立場に立ってみると、就職はしたものの、思いがけぬ職場に配属されて、「こんなはずではなかった」と思っている人もあるかも知れない。

  就職ではないが、わたしが少年の日、志願入隊した海軍がそうであった。

  夢にえがいていたのとはちがい、ふやけた士官、凶暴な下士官、意味もない訓練、常識はずれの罰直…と、心外なことの連続であった。―中略― 考えてみれば、人生はこうした悔いのくり返しである。

とすれば、悔いるだけでなく、とにかくその中に入りこんでみて、得られる限りのものを吸収し、そこから出られる日を待つしかない。

日本化薬の原安三郎さんがそうであった。

化学会社に就職したのに、配属された先が飯場の炊事係であった。思ってもみなかった職場である。

だが、原さんはくさらなかった。

米の仕入れひとつにしても、「どこの米がうまいか」、「米の値段にどういう違いがあるか」、「品質のちがいとどう関係があるのか」―中略― 等々、調べる気になれば、勉強する材料はいっぱいあった。―中略― そして、勉強して行くと、次から次へと、また勉強の材料が出てきた。

最初はつまらないと思った日々の仕事にも、はりが出てきた、という。―中略― それは、どんな職場についてもいえると思う。初心である限り、人生はいくらでもひろがって行くものなのである。」 私を含め、つい人は、うまくいかないことを、他人のせいや環境のせいにしてしまいがちです。

ですがこの本にあるように、どんな環境にいても、志次第で、そこで何かを吸収し、得られるものがあると思うのです。

南宗の儒者 蘇老泉の言葉でこんな言葉があります。

「功の成るは成るの日に非ず。 けだし必ず由って起こるところあり。

 禍の作るは作るの日に作らず。また必ず由って兆すところあり。」 成功も失敗も必ず原因があって起こるもの。その原因を作っているのは日々の自身の行いによるもの。

不平不満をもらすのではなく、どんな環境にいても自ら進んで学んでいく姿勢を持って、日々取り組んでいきたいものですね。

川西 慶治