「知」の結集 ゆびすいコラム

2015.11.22

「キャリアパスの明示で勤続モチベーションを高めましょう」

先日、 「衝撃給与」暴露相次ぐ と、保育従事者の給与が低いと現役保育士が自身の給与額を公表しながら訴える模様がニュースで取り上げられました。

子どもの命を預かる仕事であり、給食の時間も園児らが食事を喉に詰まらせないか常に注意しなければならない等、常に気を張っていなければならない職業です。それに加え、身体を動かす仕事でもあり、精神的にも肉体的にも大変な仕事でもあります。

このような大変な仕事である一方、その給与額は低いというのがそのニュースでの内容でした。

今年から始まった子ども・子育て支援新制度における公定価格では、「処遇改善等加算」の制度が設けられ、このような保育従事者に対する処遇改善を図る仕組みができました。この制度では①賃金改善、②キャリアパスの明示を要件として、加算が行われることになっています。この制度の目的は「質の高い教育・保育を安定的に供給していくために、『長く働く事ができる』職場を構築する」ことです。つまり、働く人の勤続意欲を高めることが目的です。

ハーズバーグの二要因論によると、人間が仕事に満足感を感じる要因(動機付け要因)と不満足を感じる要因(衛生要因)は全く別物となります。給与等の賃金は衛生要因であり、仕事そのものや責任・昇進や自身の成長が動機付け要因であると考えられています。

つまり、衛生要因である賃金の改善は不満足を感じる要因を減らすだけで、仕事の満足にはつながりません。仕事に満足を感じられる様にするためには、動機付け要因である仕事そのものの魅力、責任、自身の成長感が感じられる事が必要になります。

処遇改善等加算の要件では
①賃金改善(衛生要因の対処)
②キャリアパスの明示(動機付け要因の対処)
の両方が盛り込まれているものだと考えられます。
ですから、この制度を利用して、教職員の皆さんの勤続意欲を高めるためにも、特に②キャリアパスの明示の際にはただ研修計画を明示するだけでなく、その役割やステップアップの階層を明示するなど、成長の過程を自覚できるような制度の構築を行いましょう。

経営コンサルティング事業部 中小企業診断士   岩瀬 学
労務