「知」の結集 ゆびすいコラム

2022.12.08

公益法人の遊休財産額保有制限と社会福祉法人の社会福祉充実残額

 公益法人における財務基準につきまして、少し違う視点から書いてみました。
 
 公益社団法人、公益財団法人の運営においては、いわゆる財務三要件(収支相償、公益目的事業比率、遊休財産保有制限)を遵守する必要があります。そのうちの遊休財産額保有制限とは、遊休財産額(公益目的事業に直接要しない財産額)が、1年間の公益目的事業費を超えてはならないというものです。算式は以下の通りです。
 
「遊休財産の保有上限超過額={資産-(負債+一般社団・財団法人法第131条の基金)-(控除対象財産※-対応負債の額)}-1年間の公益目的事業費」
※控除対象財産・・・・法人財産の現に使用している、目的用途が具体的に決まっているもの
 
 この算式は社会福祉法人における社会福祉充実残額の算定式とよく似ています。算定方法には原則と特例がありますが、特例(簡便な計算方法)においては、
「社会福祉充実残額={正味財産(資産と負債の差額)-(未収補助金+社福事業供用不動産-設備資金借入金等)}-年間事業活動支出」
言い換えると、
社会福祉充実残額=正味財産(資産と負債の差額)-社福事業に直接要する財産-年間事業活動支出となります。
 
 この基準は公益法人における財務基準として、注目すべき制度です。
 この基準を満たすべく、公益社団法人、公益財団法人においては各年度末の遊休財産額が保有上限を超過している場合には、公益目的事業に使途を特定した固定資産の取得、将来の事業拡大等のための特定費用準備資金の積立などを検討しなければなりません。
 一方、社会福祉法人においては、社会福祉充実残額が算出された場合には、社会福祉充実計画を策定し、所轄庁へ提出する必要があります。
 
 いずれの法人も、年度内から収支を正確に把握し、早めに対応・検討することが大切となります。実施を検討している事業の内容によっては、事業計画についての理事会等における意思決定や、定款の変更が必要となる場合もあります。
 
 このような事業計画の策定や収支予測につきましては、お近くのゆびすいグループ各支店まで是非ご相談ください。
 
京都支店 林優花
 
 
教育・福祉事業