「知」の結集 ゆびすいコラム

2023.10.05

処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの整理と活用について

 処遇改善等加算の制度は、職員の処遇を改善するためのものではあるものの、その制度の難しさと扱いづらさが相まって活用するにも手に負えないケースが見受けられます。そこで今回は処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲについて整理し、今後考えられる課題と活用について考えていきましょう。
 
処遇改善等加算Ⅰ,Ⅱ,Ⅲとはそもそも何であったか
 処遇改善等加算Ⅰは平均経験年数に基づいた加算です。公定価格について考えてみますと、そのほとんどが単価に対して園児数を乗じており、職員の経験値等は考慮されていません。そうすると、人件費が比較的安価な若手のみで構成すると”おいしい”状態は作れますが、一方で提供する保育や教育の質は上がりません。このため、加算として経験値を考慮することにより、職員の処遇を改善するためのものといえます。分配の自由度が他の処遇改善等加算よりも高く、必ずしも経験値に応じて分配しなければならない、というわけではありません。
 処遇改善等加算Ⅱは技能・経験に基づいた加算です。一定の役職を任命することにより、その役職に応じた手当(処遇改善Ⅱ)を支給することで、職員の処遇を改善するものです。令和5年度より研修要件の適用が開始されたことで、一定の研修を受講した方のみを対象として任命及び手当の支給ができるようになっております。
 処遇改善等加算Ⅲは令和4年に開始された臨時特例事業の延長にあるもので、継続的な賃上げのための加算です。創設当初は「全員に9,000円」という話が独り歩きしましたが、配分額については処遇改善等加算Ⅰ並みの自由度があります。ただし、2/3以上は月額の固定給での支給が必要、という点は処遇改善等加算Ⅰと異なる点です。
 
 
今後の処遇改善とその活用について
 処遇改善等加算Ⅱの研修要件は適用が開始されたものの、経過措置の途中にあります。今後は一定の役職の任命を受けるためには60時間(または4分野)の研修が必要になることから、配分額だけではなく、任命するにあたっての公平な評価が求められます。こうした処遇改善を漠然と実施してしまうと給与の逆転現象が生じてしまったり、賃金体系そのものがくずれてしまったりするおそれがあります。
 例えば、同じ10年目のAさんとBさんがいた場合、特に評価制度がない状態でどちらかに研修を受講してもらい任命し手当を支給すると、その分だけ他方の職員との間に根拠のない差が生じてしまい、不満の種となってしまいかねません。
 そこで1つの活用例としては、まず分配の自由度の低い処遇改善等加算Ⅱを先に分配し、それによって生じる差を処遇改善等加算ⅠやⅢで埋めていくという方法があります。この時、前述した不満を生まないためにも一定の評価制度を構築した上で役職の任命を判断することを推奨いたします。
 処遇改善は職員の賃金を改善するだけではなく、今後のモチベーションも左右することになります。人材難である幼保業界において、評価すべき人材を見極め、その処遇の改善をはかるためにこうした加算を活用して、職員が定着するよう取り組むことが今後必要となるでしょう。
 
株式会社ゆびすいコンサルティング 田中 和臣
 
 

教育・福祉事業