「知」の結集 ゆびすいコラム

2023.10.13

私立学校法の改正に向けて

 令和7年4月1日付で、新たな私立学校法が施行されることになりました。
この改正は、私立学校が、社会の信頼を得て、一層発展することを目指し、社会の要請に応え得る実効性のあるガバナンス改革を推進するための制度改革です。
 特に、「執行と監視・監督の役割の明確化・分離」の考え方から、理事・理事会、監事及び評議員・評議員会の権限分配を整理し、私立学校の特性に応じた形で「建設的な協働と相互けん制」を確立することを目的としています。
 
 そこで、改正に向けて文部科学省から公開されている資料に基づいて、役員等の資格・選任等について説明させていただきます。
 
Ⅰ.理事
【定数】
5人以上
※ 租税特別措置法第40条(法人に財産を贈与した場合に譲渡所得税を非課税の取扱いにする制度)に対応するための寄附行為では、理事定数は6名以上となることが推測されます。
 
【構成要件】
① 設置する学校の長を含むこと。
② 外部理事を含むこと(1人以上)。
③ 他の2人以上の理事、1人以上の監事又は2人以上の評議員と特別利害関係を有していないこと。
④ 他の理事と特別利害関係を有する理事の数は、理事の総数の3分の1を超えないこと。
⑤ 評議員・監事と兼職しないこと。
 
【任期】
4年以内の期間で寄附行為に定める必要があり、その寄附行為で定める期間以内に終了する最終年度に関する定時評議員会の終結の時までとなります。
 
【選任機関】
理事選任機関を寄附行為に定めることが必要となります。例えば、
① 評議員会において選任
② 理事会において選任
③ 第三者機関において選任
※ ②または③で理事を選任する場合には、あらかじめ評議員会の意見を聴く必要があります。
 
 
Ⅱ.監事
【定数】
2人以上
 
【構成要件】
① 理事、評議員、学校法人の職員等と兼職しないこと。
② 1人以上の理事、他の監事又は2人以上の評議員と特別利害関係を有していないこと。
 
【任期】
6年以内の期間で寄附行為に定める必要があり、その寄附行為で定める期間以内に終了する最終年度に関する定時評議員会の終結の時までとなります。
 
【選任機関】
評議員会において選任
 
 
Ⅲ.評議員
【定数】
理事を超える数
 
【構成要件】
① 職員を含むこと(1人以上)。
② 25歳以上の卒業生を含むこと(1人以上)。
③ 他の2人以上の評議員と特別利害関係を有していないこと。
④ 理事又は理事会が選任した評議員の数は、評議員の総数の2分の1を超えていないこと。
⑤ 理事、監事、他の評議員のいずれかと特別利害関係を有する者、子法人の役職員である評議員の数は、評議員の総数の6分の1を超えていないこと。
 
【任期】
6年以内の期間で寄附行為に定める必要があり、その寄附行為で定める期間以内に終了する最終年度に関する定時評議員会の終結の時までとなります。
 
【選任機関】
評議員選任機関を寄附行為に定めることが必要となります。例えば、
① 評議員会において選任
② 理事会において選任(理事会のみの設定は不可)
③ 評議員選考委員会等において選任
※ 上記のうち複数の機関を設けることも可
 
 
今後、「贈与等にかかる譲渡所得の非課税が適用されるための寄附行為」や「各都道府県の認可要件に適合する寄附行為」の作成例が示されることで、より細かな要件が設定されると想定されます。
よって、具体的な寄附行為作成の準備は、現時点では時期尚早であり、各所轄庁から通知がなされた後に取り掛かられることをお勧めします。
 
司法書士法人ゆびすい登記センター 今井悠平
 
 
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