「知」の結集 ゆびすいコラム

2023.06.22

当こども園の人件費率は高いですか?

 毎年6月になりますと、認定こども園を運営しておられる社会福祉法人の役員・評議員の皆様から以下のような質問をよく頂戴します。
 
1.平均的な人件費の割合を教えてください。
2.給食費、水道光熱費、業務委託料、減価償却費の割合はどうでしょうか?
 
決算報告に係る理事会及び評議員会に臨み、関心が高まる内容です。もちろん定員規模や地域性、その他の条件を考慮すべきですが、独立行政法人福祉医療機構が発表している「2021年度保育所および認定こども園の経営状況について(令和4年11月14日)」等が参考になります。
 
1.平均的な人件費の割合を教えてください。
 令和3年度の人件費率(人件費÷サービス活動収益)の規模別比率は次のとおりでした(平均69.4%)。
 
 
 ちなみに保育所における令和3年度の人件費率を令和2年度と比較してみると、0.6%上昇しています。令和3年度は、保育士等への処遇改善として給与の3%程度の加算(いわゆる月額9,000円加算。処遇改善Ⅲ)が令和4年2月~3月の2か月間実施されました。これも0.6%の増加にも影響したと推定されます。同内容を考慮すれば、令和4年度においては通年で処遇改善Ⅲが実施されたこと、人事院勧告によるプラス2.1%の補正の影響も受けていること等から、一般的に人件費の「総額」は令和3年度比で4%程度は上昇すると推定されます(人件費率も上昇)。
 令和4年度の人件費支出状況を検討される際は、人件費率に加え、個別事情を踏まえた上で人件費増加率((R4人件費-R3人件費)÷R3人件費)がどの程度であったかについてもご確認下さい。
 
2.給食費、水道光熱費、業務委託料、減価償却費の割合は?(○○費÷サービス活動収益)
 令和3年度の人件費以外の主な経費の比率は以下のとおりです。
①給食費率:4.2%~5.4%。給食に関する各施設の諸事情は考慮すべきですが、定員数が多いほど割合が大きくなる傾向にあります。また令和4年度は食材費高騰により比率が上昇していることも予想されます。
②水道光熱費率:2.0%~2.3%。規模による比率の多寡は見られませんが、給食費と同様に令和4年度は光熱費高騰によって当該比率が上昇していると考えられます。
③業務委託費率:2.1%~3.3%。定員数が多いほど割合が大きくなる傾向にあります。教職員の採用に加えて、業務のアウトソーシングを実施している様子が伺えます。
④減価償却費率:2.9%~3.6%。大規模の減価償却費率が高くなっているようです。
 
 決算承認理事会・評議員会に臨み、ご参考にして頂ければ幸いです。
 
京都事業部 泉岡伸也
 
 
教育・福祉事業