「知」の結集 ゆびすいコラム

2023.12.22

租税特別措置法第40条の申請と寄付金控除の関連について

 個人が法人に不動産や株式などの財産を寄附した場合、寄附時の時価で譲渡があったものとみなし、当該財産の取得時から寄附時までの値上がり益に対して所得税が課されます。
 ただし、公益法人等に財産を寄附した場合に、一定の要件を満たし国税庁長官の承認を受けたときは、この所得税が非課税(厳密には課税の繰り延べ)となる制度が設けられています(租税特別措置法第40条)。
 この措置法40条による非課税措置を受けない場合には、譲渡所得は課税対象となりますが、代わりに寄付金控除の適用が受けられます。
 財産の取得に要した費用(不明の場合には時価の5%)や時価、措置法40条の適用の有無により寄付金控除可能額が変動する非常に複雑な制度ですので、いくつか具体的なケースを用いて措置法40条と寄付金控除の適用関係について見ていきましょう。
 
 
ケース1:時価1,000万円、取得費用700万円の土地を寄附した場合
      ⇒譲渡益300万円が措置法40条の申請により非課税となり、取得費用700万円
       は寄付金控除の対象となります。
 
ケース2:時価1,000万円、取得費用不明の土地を寄附した場合
      ⇒取得費用は時価の5%の50万円とされ、寄付金控除の対象となります。
       また、譲渡益950万円が措置法40条の申請により非課税となります。
 
ケース3:時価1,000万円、取得費用1,300万円の土地を寄附した場合
      ⇒取得費用が時価を上回りますので譲渡益は生じません。
       取得費用は1,300万円ですが、寄付金控除の対象額は時価が上限であるた
       め、1,000万円となります。
 
ケース4:時価1,000万円、取得費用700万円の土地を寄附し、措置法40条の申請を行
        わなかった場合
      ⇒1,000万円が寄付金控除の対象となります。ただし、譲渡益300万円が譲渡
       所得となります。
 
 措置法40条の申請を行う場合、寄附した財産の譲渡益が非課税となり、時価を上限として取得費用について寄付金控除の適用が受けられます。
 一方、措置法40条の申請を行わない場合は、寄附した財産の時価が寄付金控除の対象となり、譲渡益は課税所得となります。 
 措置法40条の申請により非課税となる金額について寄付金控除の対象とすることは、両制度の重複適用となり認められませんので注意が必要です。
 
 ここまで措置法40条の申請と寄付金控除の関連について見てきましたが、上記で挙げた以外にも様々なケースが想定されます。公益法人等に財産の寄附を検討しており、措置法40条の申請や寄付金控除制度に不安がある方は税理士等の専門家に相談することをお勧めいたします。
 
税理士法人ゆびすい 名古屋支店  梅田 尚哉
 
 
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