「知」の結集 ゆびすいコラム

2023.05.18

リース会計新基準の影響について

日本の会計基準を設定する企業会計基準委員会(ASBJ)が、原則としてすべてのリース取引の貸借対照表計上を求める新基準の設定を、2026年度をメドとして目指しています。リース新基準の設定については、投資家からリース取引の実態が貸借対照表に示されていないと批判が多かった一方、経済界からの反発も強く、時間を要した経緯があります。(なお、国際財務報告基準(IFRS)における、リース基準(IFRS16)の設定には、当初から10年もの期間を要しています。)
 
ここで、リース新基準の設定が及ぼす影響について書きたいと思います。(効果(メリット)については、"買う"か"借りる"かの違いに過ぎないにも関わらず会計処理が異なっている不公平感を解消することにあります。)
 
なお、リース新基準により、新たに資産・負債計上が求められる企業は1,400社にのぼると見られており、中小企業は引続き、「中小企業の会計に関する指針」に基づき、支払リース料を損益計算書計上する賃貸借処理が原則的な取扱いとされる公算が高いです。
 
○「リース資産」として、貸借対照表に資産計上する影響
資産計上に伴い減価償却費を計上する必要があります。もっとも現状でもほぼ同額を支払リース料として計上しているため、リース新基準の損益計算書に与える影響は軽微といえます。
 
○「リース債務」として、貸借対照表に負債計上する影響
負債計上による、財務健全性を示す自己資本比率(純資産/(負債+純資産))、資産の効率性を示す総資産利益率(ROA)(営業利益/(負債+純資産))等の財務指標の低下に伴い、格付け機関による信用力評価が低下し、資金調達コストが上昇することが考えられます。もっとも、Moody's等の格付け機関は、既に負債計上されていないリース取引も考慮して信用力評価を行っており、その点ではリース新基準による影響は軽微といえます。
 
○「リース資産」、「リース債務」として、貸借対照表に計上する影響
まず「リース資産」≒「リース負債」として計上され、次に「リース資産」は減価償却費、「リース負債」は支払リース料としてほぼ同額ずつ減少していくため、会社業績面に与える影響は軽微といえます。もっとも、現状の「未経過リース料」の注記から、「リース資産」・「リース負債」という勘定科目として仕訳にも用いられるようになると、より正確な数値が求められることも考えられます。正確な計上には、契約書ベースでの取引内容の把握が必須となりますが、日本中・世界中でのリース取引の把握は難しく、既に契約書を破棄していることも多いと考えられます。正確な計上のため、リース契約を網羅的に洗い出す場合の事務コスト面において、影響が大きいと考えられます。
 
堺事業部 吉田
 
 
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