「知」の結集 ゆびすいコラム

2009.07.22

振り返ってみれば

 今思えば隔世の感がするが、つい昨年の夏ごろまでは、本当に景気はヤバイのか、というのが議論の対象だった。

 日本の金融機関は証券化ビジネスにはそれほど深入りしておらず影響は軽微だろうといわれていたし、日本経済を支える製造業はバブル後の失われた10年の間に筋肉質の財務体質の構築に成功しているから長期的には増益基調に変化なし、との見方が大勢を占めていた。米経済もリセッションはまぬがれ、どうにか軟着陸できそうだ、との論調が支配的だった。

 その後、どういう経緯をたどったかはいまさら説明の必要はない。

 ではどうすればこれを予測できたのか、という結果論的な議論にあまり実利はなさそうだし、過去の世界恐慌との比較分析もさかんに行なわれているが、意味があるのかどうか私にはよく分からない。

 金融危機以前の世界経済は、グローバリズムという名を冠したモノカルチャー経済だったのだと思う。本当の意味での多様化の時代はこれからなのだと思う。

(税理士:白井一馬)