「知」の結集 ゆびすいコラム

2016.07.20

減価償却制度の見直し【平成28年度税制改正】

 平成28年度税制改正により、減価償却制度が見直されています。

 具体的には、平成28年4月1日以後に取得する「建物附属設備」及び「構築物」の償却方法は、従来は「定率法」または「定額法」の選択制(届出をしない場合は「定率法」を選択したとみなされます)でしたが「定額法」のみに変更されました。
 
 また、「鉱業用減価償却資産」のうち、「建物」、「建物附属設備」及び「構築物」の償却方法は、「定額法」または「生産高比例法」の選択制とされました。
 最近の改正では法人税率の引き下げが続いているところ、税収確保のために課税ベースを拡大しようという改正が多くなされています。この減価償却制度の改正もその一つです。

 例えば、取得価格1,000万円の建物附属設備(耐用年数15年)を購入した場合を考えてみます。定率法で計算した場合の減価償却費は、133万円(1年目)、115万円(2年目)、99万円(3年目)・・・と年々減少します。
 それに対して、定額法では毎期67万円と一定です。取得3年目までで、経費にできる金額の差は146万円となり、決して少なくない金額となります。
 
 もちろん、どちらの方法で計算した場合にも、最終的には簿価1円まで償却できます。したがって、耐用年数を経過するまで償却すれば、トータルの経費に落ちる金額は同額となります。
 ただ、法人税等の実効税率は引き下げられており、今後も下がる傾向にあると考えられます。そのため、償却方法が定率法から定額法に変更となる今回の改正は、引き下げられる税率の差だけ「増税」となります。

 多くの会社は、毎期の減価償却費をシステムで計算されていることと思います。平成28年4月1日以後に取得する「建物附属設備」と「構築物」は、システムへの資産登録時に「定額法」で登録することをお忘れないように。
 なお、上述の償却方法の改正は「税法」での償却限度額の計算方法の改正であり、「会計」の減価償却計算の方法を変更しなければならないわけではありません。

 実務では、「会計」の減価償却計算を「税法」の償却計算と合わせる処理が定着しています。
 したがって、多くの中小企業は、今回の改正に基づいて平成28年4月1日以後に取得する「建物附属設備」と「構築物」の償却方法は定額法を採用すると思います。
 しかし、減価償却の計算方法は、会社が選択する会計方針の一つです。税法の改正は「会計」の減価償却計算まで変更することを強制するわけではありません。
 そのため、改正後も「建物附属設備」と「構築物」について、「会計」は定率法を続けることも可能です。

 ただし、その場合は、会計の減価償却費と税法の償却限度額とが相違することなるので、法人税の申告書にて申告調整しなければなりません。その点、ご注意ください。
 
  公認会計士・税理士 緒方 康人
税 金