令和6年の税制改正大綱の中に、「交際費等の損金不算入制度の拡充」と題して、損金算入できる交際費から除外される一定の飲食費の金額基準を、従来の5,000円から10,000円へ引き上げる旨の項目が挙げられました。
法人税法には、損金経理できる接待交際費の上限についての規定があります。法人の規模によって、その内容が異なりますが、中小法人( 期末資本金の額が1 億円以下の法人)の場合は、①接待飲食費の50%と②年800万円までのいずれかを限度額として選択できます。上記の中小法人以外の法人の場合には、前述の②の規定がなくなり、接待飲食費の50%が上限となります。(期末資本金が100億円を超える法人は接待交際費の全額が損金算入できません。)
何が「交際費」に該当するかは、どのような勘定科目をもって処理されているかにかかわらず、その対象者が誰であるか、何を目的とした支出であるかなど、その取引の実態により判定がされるため、税務調査や裁判などでも頻繁に争われている論点です。
ただ、「交際費等の範囲から除かれるもの」としてはっきりと明記されているものがいくつかあり、それらのうちの代表的なものの一つが「一人あたり5,000円以下の接待飲食費」です。
国税庁のQ&Aの文言を引用すると『飲食等のために要する費用であって、その支出する金額を飲食等に参加した者の数で割って計算した金額が5,000円以下である費用(以下「5,000円ルール」と言います。)』とあり、この「5,000円ルール」を満たすようにすれば、50%損金不算入という法人税法上の制限を気にすることなく、積極的に接待活動を行うことができます。
このような「5,000円ルール」について、令和6年度の税制改正によりその金額基準が引き上げられることになり、令和6年4月1日以後に支出する接待飲食費については、一人あたり10,000円以下まで交際費から除くことができることとなります。
中小企業以外の場合は、接待交際費はその一部又は全部が否認されてしまうため、このルールの基準金額が引き上げられるというのは、多くの企業にとって望ましい改正となるでしょう。
「5,000円ルール」に合わせる形で、社内規定での接待飲食費の額を1人5,000円までと定めている企業も多数あり、飲食需要の拡大を阻害しているのではないかという指摘が日本商工会議所からもあったようで、昨今の物価水準の高騰もあいまって、今回の基準金額の引き上げの要望が出されたそうです。
中小法人に該当する会社にとっては、接待交際費の上限が年800万円とされておりますので、それほど影響のある改正ではないかもしれませんが、それ以外の会社にとっては、損金算入できる額が増え、結果的に減税にもつながる改正ですので、これを機に規定を見直し接待飲食を促す会社も増えてくるかもしれません。この改正が政府の狙い通り、飲食需要を喚起し、「デフレマインドを払拭する」後押しとなることを期待しています。
石橋