「知」の結集 ゆびすいコラム

2025.08.04

「高校無償化」の現実──本当にお金はかからない?

 「高校は無償になったから、お金の心配はない」と思っている人も多いかもしれません。確かに、2010年から始まった「高校授業料無償化制度」により、公立高校の授業料(年間約12万円)は原則として全額免除され、私立高校でも年収に応じて支援が受けられるようになりました。国の制度として「就学支援金」が支給され、家庭の負担軽減につながっています。

でも実は、「無償」とは言っても、“すべてが無料になる”わけではありません。特に私立高校と公立高校では、かかる費用に大きな違いがあるのが現実です。
まず公立高校の場合、授業料はかかりませんが、教科書や制服、通学の交通費、部活動費、修学旅行の積立金などは自己負担です。目安として、年間にかかる費用は平均で約20万円~30万円と言われています。塾や習い事などを含めれば、それ以上になることもあります。
一方で、私立高校では授業料の平均は約40万円〜50万円ですが、就学支援金制度によって、年収約590万円未満の世帯は実質的に授業料が全額補助されます。しかし、私立ならではの教育環境や施設使用料、寄付金、教材費など、授業料以外の支出が多く、年間の総費用は平均で約70万円〜100万円とされます。つまり、授業料は無償でも、その他の費用で公立に比べて倍以上かかることもあるのです。
加えて、祖父母などからのサポートを受けられる場合には、「教育資金贈与制度」の活用も視野に入れてみてはいかがでしょうか。この制度を使えば、子や孫の教育資金として最大1,500万円までの一括贈与が、非課税で受け取れる可能性があります。授業料だけでなく、修学旅行の積立金や通学定期代、塾の月謝なども対象となるため、小学校から大学までの教育費を広くカバーできます。
「無償化」と聞くと安心しがちですが、実際には教育にかかるお金はゼロではありません。進学先によって、家計への影響は大きく変わります。だからこそ、お子様と一緒に、学校選びとあわせて「お金のこと」もきちんと話し合うことが大切です。
税理士法人ゆびすい 堺事業部 奥野聡也
教育・福祉事業