スマートフォンやタブレットは、今や若い世代のものではなく、高齢者の日常生活にも欠かせない存在になっています。
ある調査によると、60代で9割超、70代で8割超がスマートフォンを所有しているとのことです。
その活用シーンは多岐にわたり、家族とのビデオ通話やオンライン診療、趣味の情報収集だけでなく、行政手続きやネットスーパーの利用、災害時の緊急情報の受信など、通信環境は生活の質に直結する要素になりつつあります。
もちろん、特別養護老人ホーム等の介護保険施設の利用者についても例外ではありません。
Wi-fi 等の通信環境を整備している施設も少なくないのではないでしょうか。
ではこの「Wi-fi 等の通信設備の利用料」は利用者から徴収してよいのでしょうか。
「『その他の日常生活費』に係るQ&Aについて」の一部改正について(令和7年2月付け、介護保険最新情報Vol.1355)下記文言が新設されました。
問9 利用者用の居室等におけるWi-fi等の通信設備の利用料は、利用者から徴収できないのか。
答 サービス提供とは関係のない費用として、徴収は可能である。
今回の改正により、「Wi-fi 等の通信設備の利用料」を利用者から徴収してよいと明確な回答がなされました。
以下補足になりますが「『その他の日常生活費』に係るQ&Aについて」は、
「通所介護等における日常生活に要する費用の取扱いについて」の通知の参考情報として整備されたものになります。
「通所介護等における日常生活に要する費用の取扱いについて」の通知では、
日常生活においても通常必要となるものに係る費用であって、その利用者等に負担させることが適当と認められるもの(「その他の日常生活費」という。)の受領に係る基準ついては下記のように記載されています。
① 「その他の日常生活費」の対象となる便宜と、保険給付の対象となっているサービスとの間に重複関係がないこと。
② 保険給付の対象となっているサービスと明確に区分されないあいまいな名目による費用の受領は認められないこと。したがって、お世話料、管理協力費、共益費、施設利用補償金といったあいまいな名目の費用の徴収は認められず、費用の内訳が明らかにされる必要があること。
③ 「その他の日常生活費」の対象となる便宜は、利用者等又はその家族等の自由な選択に基づいて行われるものでなければならず、事業者又は施設は「その他の日常生活費」の受領について利用者等又はその家族等に事前に十分な説明を行い、その同意を得なければならないこと。
④ 「その他の日常生活費」の受領は、その対象となる便宜を行うための実費相当額の範囲内で行われるべきものであること。
⑤ 「その他の日常生活費」の対象となる便宜及びその額は、当該事業者又は施設の運営規程において定められなければならず、また、サービスの選択に資すると認められる重要事項として、施設の見やすい場所に掲示されなければならないこと。ただし、「その他の日常生活費」の額については、その都度変動する性質のものである場合には、「実費」という形の定め方が許されるものであること。
今回の改正を機に、運営している施設の利用料の徴収について適切な運用がされているか点検してみてはいかがでしょうか。
医療介護専門部 伊藤和哉