2025.12.16
令和2年度税制改正(2020年度改正)で導入された「居住用賃貸建物の仕入税額控除の制限」は、介護施設、特に老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)など、居住を主たる目的とする施設を建設・取得する事業者に大きな影響を与えています。本制度は、消費税の還付を目的とした節税スキームを封じることを目的として創設されました。
消費税法において、土地の賃貸や居住用建物の賃貸収入(家賃)は非課税売上と定められています。
改正前は、課税事業者である法人が多額の消費税を負担して高額な居住用建物を取得し、その直後に消費税の還付を受けた後、非課税となる居住用賃貸を行うという手法が広く行われていました。
こうした行為を是正するため、現行制度では、居住用賃貸建物の取得に係る消費税は、原則として仕入税額控除の対象外とされています。
つまり、建物の取得時に支払った消費税について、国から還付を受けることができなくなりました。
介護施設における税務上の取扱いは、建物の用途によって異なります。
居住用スペース
老人ホームやサ高住の居室部分の賃貸料は、入居者の「居住」を目的とした提供であり、非課税売上に該当します。そのため、これらの居室部分の建設費等に係る消費税は、仕入税額控除の制限対象となり、還付を受けることはできません。
事業用スペース
デイサービス、訪問介護ステーションの事務所部分、あるいは外部利用者も利用する売店や食堂の一部など、居住以外の用途に供される部分は課税売上に対応します。これらの事業用スペースに係る消費税については、引き続き仕入税額控除の対象となります。
新たな施設を計画する際は、建物全体の取得価額を「居住用非課税部分」と「事業用課税部分」に厳密に区分したうえで、適切な税務処理を行うことが不可欠です。
なお、控除できなかった消費税額は、その建物の取得原価に算入され、将来の法人税計算における減価償却費として費用化されます。
本制度は資金計画に大きな影響を与えるため、建設前の早い段階で専門家と連携し、税務リスクを回避しながら事業計画を策定することが極めて重要です。
医療介護専門部 仲川
