「知」の結集 ゆびすいコラム

2026.03.11

1億円の壁

 昨今、年収の壁をめぐる議論がすっかり定着し、「160万円の壁」といった言葉もおなじみになりました。では、「160万円の壁」をはるかに超える「1億円の壁」についてはご存じでしょうか。M&A等で自社株を売却し、一時的に所得が跳ね上がった際には要注意です。

1.「1億円の壁」とは

 日本の所得税は、累進課税制度が採用されており、住民税を合わせると最高税率55.945%にもなります。一方で、株の売却益や配当金といった所得には、一律20.315%(所得税:15.315% 住民税5%)の税率しかかかりません。高所得者ほど金融所得の割合が高まる傾向があるため、所得が1億円を超えるあたりから、全体の税負担率がかえって下がり始めます。この税負担率の減少事象を「1億円の壁」といいます。

2.ミニマムタックスの導入

 こうした不公平を是正するため、2023年度の税制改正で導入されたのが「ミニマムタックス(正式名称:極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置)」です。

 これは、給与や金融所得などをすべて合算した所得が3.3億円を超えた場合に、その超えた部分について少なくとも22.5%の税負担となるよう、通常の税額との差額を追加で納める仕組みです。金融所得だけなら20.315%で済んでいた負担率を引き上げ、累進課税の適正化を図りました。

 しかし、ごく一部の超富裕層にしか効果のない制度だったため、「1億円の壁」の是正としてはまだ不十分だという声が多く上がっていたのです。

3.2026年度税制改正大綱による見直し

 こうした課題を踏まえ、政府は2025年12月に公表した2026年度税制改正大綱で、ミニマムタックスを大幅に強化する方針を打ち出しました。

 主な変更点は以下の2点です。

(1)所得から差し引くことのできる控除額を3.3億円から1.65億円に半減

(2)控除後の所得にかかる税率を22.5%から30%に引き上げ

 この改正により、ミニマムタックスの対象となるハードルは大きく下がります。これまでは一部の超富裕層に限られていた制度ですが、今後はM&A等で自社株を売却したオーナーが対象となるケースも増えてくるでしょう。

 適用は2027年分の所得税からの予定のため、売却時期によって税引後の手取り額に大きな差が生じることも考えられます。

 ご不安な点がございましたら、お早めに弊社担当者までご相談ください。

税理士法人ゆびすい 本社事業部

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