「知」の結集 ゆびすいコラム

2009.02.28

予定通りが半分、未知なる部分が半分

 脳科学の世界では、予測できる安全なことと、予測できない不確実なことが半分ずつの状態が脳に良いバランスをもたらす状態で、これを「偶有性」とよぶのだそうです。(「脳を生かす勉強法 奇跡の強化学習」PHP 茂木健一郎著)  脳がこの状態にあることがチャレンジ精神や知への好奇心を生み、予想外の発見や成長という叡智を生むのだそうです。

 これは我々の税法の世界にもそのまま当てはまります。

 税法は理屈で成り立っている法律ですから、納税者がある経済的行為をすれば、これだけの利得を得られるはずだから、それに対してはどの税法規定が適用されるはずだ、という理屈が存在します。

 一方で社会の経済活動はますます複雑になってきていますから、今までの理屈をもってしても税法規定が適用できない、という予想不能状態が発生します。書籍などを調べても、どこにも答えはない、ということも少なくありません。

 このような時は過去の実務や経験から導かれる理屈と予測不能な目の前の問題に対する知的好奇心が混ぜ合わさったときに、既存の殻をやぶるような発見とアイデアが生まれることになります。

 このことは企業の経営にもそのまま当てはまるのではないでしょうか。

 ただし、税金問題にしろ、経営にしろ現場実務ですからチャレンジして失敗してはなりません。

 失敗は税務調査による否認、会社の倒産を意味します。

 日々、脳の「偶有性」を確保し、予測不能なリスクに備えることが重要なのでしょうね。

(税理士:白井一馬)