「知」の結集 ゆびすいコラム

2009.04.10

与党の贈与税の軽減措置

 4月9日に自民党・公明党が贈与税の軽減措置として、居住用家屋を買うための贈与に限り、500万円まで贈与税を非課税とすることを公表しました(もともと贈与税は110万円の基礎控除があるため、合わせて610万円の非課税枠が設けられることになります)。

 平成22年末までの贈与で、子や孫への贈与に限られるようです。

実際のこの時限措置の影響を考えてみると… ?もともと贈与など考えていない人 → こういった人たちにとっては、贈与税の軽減措置は自分たちには関係ないですね。

?以前から子や孫に家を買ってあげたかったが贈与税が気になっていたという人 → まさに朗報でしょう。

?資産家で相続税対策の一環として生前贈与を行なっている人  → 資産家ということは既に家は持っている可能性が高いでしょうし、家を買うことを条件にした優遇措置はあまり利用されないように思われます。家の改修のための贈与も認められるので、こちらはある程度は、利用されるかも。

 日経新聞の記事によるとこの減税措置による経済効果は5千億円とのことなので、消費全体への効果はないとはいえないわけですが。

 以前から日本には金融資産が1500兆円もあり、その大部分を高齢者世代が保有しているといわれていますから、これを何とか消費に結びつけようというのはわかるのですが、一方で日本の家計貯蓄率は、減少する傾向にあります。

昭和48年度には家計貯蓄率は23.2%だったのが、平成16年度には2.7%にまで低下しています。これは、可処分所得のうち、2.7%しか貯蓄にまわしていないことを表しています。

 つまり、今までのペースでは貯蓄できなくなっていたり、貯蓄を取り崩して生活する人の割合が増えていることを示しているわけです。こうした状況に加え、年金問題に象徴される将来への不安が、消費を減少させていることが考えられます。

 その意味では、将来への不安をなくすような社会保障政策の抜本的な改革こそが必要なのでしょう。

(税理士:白井一馬)