「知」の結集 ゆびすいコラム

2009.06.24

増税、減税だけでは語れない税制改正

 税制改正で話題になりやすいのは、増税や減税を伴う改正です。消費税率アップや企業投資減税などの改正がそれです。

 しかし、税制改正は、国の税収の問題や産業政策の必要性以外にもいろいろな理由で行なわれます。もちろん最終的には円滑な税収の確保が目的なのですが。

◆租税回避を防止するための改正  いわゆる法の抜け道を見つけ出し、不当な減税が行なわれるようになると、これを規制するために改正が必要になります。例えば金融商品を利用した過剰な節税手法が改正で規制されるような場合です。

◆不合理な課税を解消するための改正  先ほどの改正とは逆に、これに税金がかかってしまうのはおかしいんじゃないの、という不合理な状況を解消するために改正が行なわれることもあります。例えば、事前に届出た役員賞与は、損金にできるように改正された事例があります。

◆社会の変化に対応するための改正  経済社会の変化を放置しておくと、税負担の公平が図れなくなってしまいます。例えば会社法の改正などがあると、税法の整合を維持するために改正が行なわれます。また、組織再編制度が新設されたときは、組織再編税制が整備され、税制の手当てが行なわれました。

 国の財政の問題は当然難しい課題なのですが、複雑化する経済社会に税制を適合させるための改正もとても難しい課題といえます。

(税理士:白井一馬)