「知」の結集 ゆびすいコラム

2009.07.06

常識のウソを見抜く

 セブン&アイ・ホールディングス 代表取締役会長・CEO 鈴木敏文氏は、その著書(朝令暮改の発想 新潮社)のなかで、事業を成長させるには、常識のウソを見抜くことが必要だと説いてます。

 例えば「顧客のために」という常識は、売り手の側から見て都合の良い行動に過ぎないといいます。例えばコンビニでおにぎりを売る場合を例にとってみれば。

 いま一番売れているおにぎりをもっと安く売ればよいというのが、「顧客のために」という発想です。売り手にとっても採用しやすい戦略です。しかしこれでは、消費者は飽きてしまい、売上は伸び悩みます。

 ではどうするのがよいのか。

 それは「顧客の立場」で考えることです。

「顧客の立場」で考えるという発想が、セブンイレブンで業界の常識を超える200円高級おにぎりというヒット商品につながったのだそうです。消費者も考えもしないことをする。しかしそれには今売れているおにぎりを捨て、開発から販売まで一からやり直すことが必要です。

 この発想は、われわれの税理士業についても考えさせられます。安易に危険性の高い節税策の実行や問題の先送りは確かにその場限りでは、税負担が軽減されるし、問題の表面化を避けることができます。「納税者のために」なる処理方法かもしれません。

 しかし、「納税者の立場」で考えれば、税務調査で明らかに問題となる過剰な節税はすべきではありませんし、例え負担が伴うものであっても経営上の問題解決は、はっきりと提案すべきということになります。

 売り手にとって非合理なものであっても、買い手の立場で考える、そのためには今までのやり方を変える。これが、「顧客の立場」に立つ発想であると、鈴木会長は述べています。

(税理士:白井一馬)