「知」の結集 ゆびすいコラム

2009.08.04

二項対立的思考のワナ

 例えば公共事業をめぐる議論の場合、良いか悪いかという二項対立的な議論になりがちです。

 公共事業というのは、採算性は低くても必要な事業です。「採算が取れないから、この地域の災害対策上必要なインフラ整備はやめておこう」というのは困ります。こういった事業は民へ移譲すべきでありません。採算性と効率化を追及するのが民間の発想だからです。

 これを前提にすると官か民かという議論は、次のように分類できると思います。

◆民営化すべきでない部門 1.公共性が高いが、非効率な運営になっている部門。これは効率化が必要。

2.公共性が高く、効率的な運営ができている部門。これは問題なし。

◆民営化すべき部門 3.公共性が低く、非効率な運営になっている部門。これは即廃止すべき、あるいは民間へ移譲すべき。

4.公共性が低く、効率的な運営になっている部門。これは即民営化すべき。民にできることは民への典型例。

 公共事業はすべてムダという考え方は、上記のような議論を素通りしてしまう危険があります。

 そしてもう一つ重要なポイントがあります。

 それは、公共性が高いか低いか、さらには採算性があるかないかというのは、高度で専門的過ぎるため、一般国民には判断できないということです。

 こういった面が強いのが税制や社会保障政策です。もちろん、どのような国としての税制を作りたいのか、という方向性を問うことは、選挙で決めるべき重要問題です。

 しかし、政策の内容によっては、選挙で国民の信を問うことなく、行政が淡々と進めるべき政策というのも存在します。

 場合によっては、国民の無知を利用し、政争の具とすることは、逆に問題であると認識することも必要なのではないでしょうか。

(税理士:白井一馬)