平成21年度改正による中小企業の事業承継税制は、大義名分としては、地域雇用確保のための税制優遇措置ということになってます。
ここでいう事業承継とは、株式の贈与や相続、遺贈を指すのですが、税金が高額になっては会社の存続が難しくなる、それでは地域雇用の阻害要因になりかねないので相続税などを猶予してあげるから、しっかり会社の運営を行なってね、という制度です。
「しっかり会社の運営を行なってね」の具体的内容は、純度の高い同族支配、後継者が代表者として会社を経営、雇用の維持確保、事業の維持継続、これを最低5年間は継続して下さいよ、という条件です。
さらに5年を過ぎれば、同族支配、代表者就任などの縛りからは開放されますが、会社の事業そのものは存続させることが継続して求められます。
う?ん、誰でも税金は安く済ませたいものですが、上記のような厳しい条件を果たして維持できるのか…、そもそも法律が企業の将来という予測不可能な未来を縛るのと引きかえに税金を猶予していいのか。
この制度ほど納税者と税理士の価値観が問われる制度はないのです。
(税理士:白井一馬)