「知」の結集 ゆびすいコラム

2015.12.04

生前の遺産分割協議は無効

お客様との相続対策についてのお話の中で、 「相続が争族とならないように、生前に相続人間で覚書を交わす。」 と言ったご希望が挙がるのですが、実はこの覚書には法的拘束力は御座いません。

例えば、遺言書を作成していない父の生前に、相続人である兄と弟が、 「父の財産は家督を継ぐ兄が全て相続する。」 と言う覚書をそれぞれの連名にて署名・捺印し作成しました。

その後、父が亡くなり、四十九日の日に弟が兄に遺産分割について話が有ると切り出します。

兄:「遺産分割と今さら言っても、前に交わした覚書の通り財産は全て自分が相続する話じゃないか。」 弟:「確かに覚書は交わしたけど、あの時と今とでは状況が異なる上に、聞けば思っていた以上に財産が有るみたいじゃないか。」 弟:「それに覚書は遺言書では無いし、生前の遺産分割協議は無効だと知り合いの弁護士に教えてもらった」 弟:「なので法定相続分の財産を相続したい。」 兄:「そんな馬鹿な、約束したじゃないか。」 こうなってしまえば兄弟での争いに発展するのは火を見るよりも明らかです。

覚書の内容があくまで父の意向であり、いわゆる「紳士協定」として作成する分には問題御座いません。

が、上記の様な「争族」対策の根本的な解決では無いと言えます。

では、「争族」を極力回避する方法は何か。

方法の一つは「遺言書」です。

遺言書はご存知の通り、被相続人が遺産分割等について作成する書類です。

遺言書において「財産は全て兄に譲る。」と記載されていれば、弟の意思だけで無効にする事は出来ません。

更にもう一つご紹介するのは「死因贈与」です。

名前だけを見れば縁起でもない気がしますが、先程の例で言えば「父が亡くなられた場合に効力が発生する贈与」です。

これだけでは遺言書との違いが解りづらいので簡単に遺言書との違いをまとめると、 遺言書 誰の意思:父の一方的な意思表示 作成  :形式が決まっており、公証役場へ赴く必要が有ったり、      自筆の場合は検認が必要 効力発生:父死亡時 対象税目:相続税 死因贈与 誰の意思:贈与者(父)と受贈者(兄)の意思表示 作成  :遺言書ほど形式に関する要求が高くない      それでも立会人と執行人が居ればなお良し 効力発生:父死亡時 対象税目:相続税 このようになります。

大きな違いは意思表示と、作成の手間の点になります。

(この他にも細かい違いが御座います。) 遺言書を作成できれば一番ですが、公証役場に赴く時間が無かったり、自筆での作成に自信が無い方は一度ご検討されてみては如何でしょうか。

相続対策はなにも節税だけが目的ではございません。

残された親族が笑顔で助け合える様な土台を作る事も立派な相続対策です。

「財産が少ないから大丈夫」と思わずに、一度専門家にご相談されてみては如何でしょうか。

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