「知」の結集 ゆびすいコラム

2017.07.14

申請が間近に迫っている「処遇改善等加算Ⅱ」について

保育士の処遇改善の対策として始まった「処遇改善等加算Ⅱ」の申請期限が迫っています。
所轄庁によっては、8月上旬が申請書の提出期限だというところも出てきています。

これから申請に取り掛かるかと思いますが、「申請をすると加算が受け取れるから条件を満たすだけ満たして申請しよう」と気軽に考えていると、保育士への待遇をよくするつもりが、退職のきっかけになるかもしれません。

処遇改善等加算Ⅱの申請様式も決まり、実際に申請をする段階になってきましたので、具体的にお客様の園ではどのように対応していくべきかを話し合うケースが多くなりました。

理事長先生・園長先生とお話をしていると、加算人数の算定方法や加算額の割り振り方法の話になりがちなのですが、ここでは保育士の立場から見た「処遇改善等加算Ⅱ」を取り上げようと思います。

処遇改善等加算Ⅱの詳細については、以下の記事をご参照ください。
参考記事:平成29年度における子ども・子育て支援新制度「技能・経験に応じた保育士等の処遇改善」

※これまでの、職員の平均経験年数や賃金改善・キャリアアップの取組に応じた人件費の加算である処遇改善等加算は「処遇改善等加算Ⅰ」という扱いになり、上記記事の「技能・経験に応じた保育士等の処遇改善としての加算が「処遇改善等加算Ⅱ」になります。

保育園を例に考えると、(想定されているイメージとして)主任保育士になる前の段階で「副主任保育士」と「専門リーダー」職を新設し、月額4万円の加算、職務分野別リーダーを新設し、経験3年以上の若手の一部に、5千円の加算となります。

対象となる保育士に、一律で4万円、5千円というわけではなく、ある程度は法人の判断で加算額を振り分けることが可能です。

月額4万円、大きいですよね。
年間にすると48万円です。年収が約50万円上がることになります。
これだけを見ると、保育士の方々にとってはとても良い制度ですが…。

いま園にいる職員の中から、誰にこの加算を割り当てますか。

例えばここで、「副主任保育士・専門リーダーはこのひと! 職務分野別リーダーはこのひと!」と明確に決めることが出来る園であれば問題ありません。しかし、ご自身の園ではこのようにズバリ決めることが出来るでしょうか。

大抵は、「園に勤めてくれて7年目の保育士が4名いる。加算対象の人数は3人だったが、4名にどのように割り振ればよいのか…」というような悩みで頭を抱えている園長先生ばかりです。
上記の例でいうと、制度の面から言えば「4名いるうちの2名に4万円、別の2名に2万円という形で割り振ることも出来ますよ」とお話をすることはできますが、
「4名いるうちの4万円を受け取る2名をどうやって選ぶのか」
「7年目の保育士よりも、勤めて6年目の保育士の方が責任がある職務を引き受けてくれているので、このひとに加算を付けたい」

などなど、実際にご自身の園でこの制度を適用することを考えると、様々な懸念事項にぶつかります。

もちろん、深く考えずに保育士の待遇改善につながるのならと、加算申請をすることも出来ます。
しかし、私が保育士だったらと考えてみると、例えば加算対象になるかどうかの微妙な立ち位置にいて加算を付けてもらえなかった場合、
「同じ年数のあのひとは加算を付けてもらって月給が4万円アップしたと喜んでいるけど、自分には何もない…。評価されていないのかな…」
と、ふてくされるのではないかと思います。

それが続けば、「もっと自分を評価してくれるところを探そう」と退職してしまう可能性もあるのではないか…と考えてしまいます。

そうなってしまっては、保育士の処遇改善のための制度でありながら、保育士の退職を引き起こしかねない要因にもなり得ます。

まだ制度が始まったばかりなので、あくまで懸念ではありますが、「処遇改善等加算Ⅱ」を考える場合、ここ数年のことだけではなく、将来にわたっての法人運営まで考える必要があります。

処遇改善等加算Ⅱの申請・加算を受けることだけを考えると、弊社にお声がけいただければスムーズに進むかとは思います。会計の視点で見ると、加算が付いた金額は、すべて保育士の処遇改善に充てる金額になりますので、法人の収支には影響がありません。そうであれば、働いてくれている保育士のために申請しよう。理事長先生・園長先生としては当然の発想だと思います。

しかしもう少し深く突っ込んで、今後の法人運営を見据えて、組織体制の見直しや職務分掌・人事考課制度の整備などまで行うことが出来れば、「処遇改善等加算Ⅱ」は、法人にとっても保育士にとっても良い制度になるかと思います。

弊社では加算申請書の作成はもちろん、そのような組織体制作りまでサポートしています。

「処遇改善等加算Ⅱ」を良い制度にするか、扱いづらい制度にするかは、法人に委ねられています。

新しい制度なので、ご不明な点は多々あるかと思います。お気軽にお問い合わせください。

(大窪 浩太)

 

教育・福祉事業