各社会福祉法人におかれましては、令和2年度の計算書類等ができあがり、理事会・評議員会が順次開催されていると思います。
また作成された計算書類等を基礎として「社会福祉充実残額」を算定し、残額が発生している場合には、社会福祉充実計画を策定し評議員会で承認を得る手続きを進めておられるでしょう。
この「社会福祉充実残額」は、WAM NETによる「財務諸表等入力シート」に数値を入力することにより機械的に算出されますが、ここでは極めてシンプルに「社会福祉充実残額」の計算をしてみましょう。まずは算式の基本から。算定方法には「原則」計算と「特例」計算があります。
(1)原則計算
① 「活用可能な財産」を算定
法人単位貸借対照表より、資産-負債-基本金-国庫補助金特別積立金の額を算定します。
② 「社会福祉法に基づく事業に活用している不動産等※」を算定
社会福祉事業に供している不動産、車両、器具備品等+未収補助金等-設備資金借入金等(リース債務含む)-基本金(1号・2号)-国庫補助金等特別積立金の額を算定します。
(※「未収補助金」は、明らかに社会福祉事業等に供されることが見込まれるので控除対象財産に含まれるます。)
③ 再取得に必要な財産の算定
建物の将来の建替費用、大規模修繕に必要な費用、および建物以外の設備・車両等の更新に必要な費用(設備・車両等の減価償却累計額)を算定します。
④ 必要な運転資金(年間の事業活動支出の3ヶ月分)を算出します。
⇒ 原則計算による「社会福祉充実残額」 = ①-②-③-④
(2)特例計算
⑤ 年間の事業活動支出(法人単位資金収支計算書より)を求めます。
⇒ 特例計算による「社会福祉充実残額」 = ①-②-⑤
①から⑤のうち、③は「財務諸表等入力シート」により取得年度等をもとに算出、④と⑤は法人単位資金収支計算書から容易に求められます。残りの①と②をシンプルに一つの算式にすると、
{(資産)ー(負債)}-{未収補助金+社福事業共用不動産(車両・器具備品等を含む)-(設備資金借入金等(リース債務含む))}
となり、さらに大胆にスリム化して設備資金借入金もなければ、
現預金等の金融資産(目的積立金含む)+事業未収金
となります。 従ってこの場合特例計算を適用すれば、「現預金総額+事業未収金」の金額から年間事業活動支出を差引いた金額が社会福祉充実残額です。さらに事業未収金もなければ、現預金残高が年間事業活動支出を超えると社会福祉充実残額が発生することとなります。
尚、実際の社会福祉充実残額の算定に当たっては、その他の貸借対照表の計上科目や保有不動産等により厳格な計算が必要となります。あくまで簡易・概算的な指標としてご理解いただけますと幸いです。
京都事業部 泉岡伸也