「知」の結集 ゆびすいコラム

2021.08.02

MS法人運営のメリット・デメリット

 昨今、医療を受ける高齢者人口が増加する一方で、医療従事者の減少が問題となっています。
 今後、医療従事者1人ひとりの負担はますます増えていくことでしょう。
 
 医療従事者に長く働いてもらうためには柔軟に働ける環境づくりが必要です。そして何よりも、病院に魅力のある安定した医療体制が確立されていなければなりません。
 このような状況下において、MS(メディカルサービス)法人の活用が今後より重要になると考えられます。
 
 厚生労働省の報告によればMS法人の活用として多い業態は以下の3つです。
①売店、食堂
②不動産の賃貸
③訪問介護・訪問入浴介護
 この他にも、医薬品・医療機器の販売、医療・経理事務、医業経営コンサルティング、広報・出版、院内清掃など、その活用事例は多岐に渡ります。
 
 それでは、これらMS法人を設立するメリット・デメリットには何があるのでしょうか。今一度、確認していきましょう。
 
 まずメリットとして挙げられるのは、主に以下の4つです。
①医療法人で行えない事業を運営できる
 医療法人は、病院等の業務に支障がない限り、定款又は寄付行為に定めるところにより附帯事業を実施することができるとされていますが、その範囲は非常に限定的です。
 患者や職員が使いやすい施設にするためには多面的なサポートが求められ、そのためにMS法人の活用が欠かせないのです。
②経営の分離
 例えば介護事業をMS法人に移転させるなど、業務の一部をMS法人に移転させることで業務負担を軽減させ、経営・労働環境(就業規則など)を病院と分けることができます。
③法人税軽減税率・交際費損金算入限度額の増加
 出資金の額が1億円以下の医療法人においては、所得(利益)や交際費支出について一定額まで税負担が軽減される措置があります。この制度は法人ごとに適用されますので、MS法人に業務の一部を移転すれば、この枠も自ずと増えることになります。
④消費税負担の軽減
 消費税は課税売上高が1,000万円以下であれば納税義務は生じません。例えばこの状況において病院がMS法人に院内清掃料を支払った場合、病院側ではその消費税相当額が控除でき、MS法人側では消費税の納税義務が発生しないこととなり、消費税の税負担軽減につながります。
 しかし、令和5年から開始されるインボイス制度で、この病院側で控除できる消費税の取扱いが変わりますので、消費税はこの点を踏まえて判断しなければなりません。
 
 そしてデメリットとして挙げられるのは、主に以下の2つです。
①運営コストの増加
 法人を別途運営するということは、登記や社会保険、税務申告等の手続きなども別途行うことになるため、その分の運営コストが増加します。
②主務官庁への取引内容の報告
 平成29年4月以降、一定のMS法人との取引はその内容を主務官庁に報告しなければなりません。報告により適切でない取引が判明した場合は、その契約内容の改善が求められます。
 
 以上がMS法人運営のメリット・デメリットの概要です。
 MS法人の設立・運営を考えられておられましたら、ぜひ弊所医療専門部までご相談ください。
 
医療専門部 大元 誠児
 
 
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