公益法人等に対して、消費税法上様々な特例制度があります。今回は、それらのうちの一つである「仕入控除税額の計算の特例」の概要について解説します。
<特例の趣旨>
当制度は、補助金等の対価性のない収入(特定収入)を原資として行った課税仕入れに係る税額について、仕入税額控除の対象から除外するというものです。
消費税の納付税額は、「売上げに係る消費税額」から「仕入れに係る消費税額」を控除することで求めることができます。
公益法人等は、通常、補助金等の対価性のない収入(課税の対象とならない収入)を主な財源としています。このような対価性のない収入を原資として課税仕入れを行った場合において、原則通りに納付税額を計算すると、「売上げに係る消費税額」が生じず、「仕入に係る消費税額」だけが生じることになり、納付税額がマイナスになります(つまり、還付を受けることになります)。
そのため、対価性のない収入を主な財源とする公益法人等は恒常的に還付を受けられる可能性が生じ、公益法人等だけが優遇されることになってしまいます。
そこで、補助金等の対価性のない収入を原資として行った課税仕入れに係る税額について、仕入税額控除の対象から除外するという特例が設けられました。
<特例の具体的内容>
対価性のない収入のうち、一定の収入(借入金等)に該当しないものが特定収入になります。
さらに、特定収入を「使途が課税仕入れに特定されている特定収入」と「使途不特定の特定収入」に分類します。前者に係る課税仕入れの税額については、全額が特例計算の対象となります。他方、後者に係る課税仕入れの税額については、特定収入のうち一定割合の金額が課税仕入れに使われていると考え、当該割合に対する金額が特例計算の対象となります。
なお、公益法人等であれば必ず特例計算を行う必要があるわけではなく、以下の要件をともに満たす場合に必要となります。
・本則課税を適用する場合
・その課税期間における特定収入割合(※)が5%を超える場合
※特定収入割合=特定収入 / (資産の譲渡等の対価の額の合計額+特定収入)
資産の譲渡等の対価の額の合計額=課税売上高(税抜)+免税売上高+非課税売上高
特例計算を適用した場合の納付税額の計算式は以下のようになります。
納付税額=課税標準額に対する消費税額-(調整前の仕入控除税額-特定収入に係る課税仕入等の税額)
「特定収入に係る課税仕入等の税額」の求め方は以下の通りです。
・全額控除の場合(a+b)
a:課税仕入等に係る特定収入の額×7.8/110(又は6.24/108)
b:(調整前の仕入控除税額- a )×調整割合(※)
※調整割合=使途不特定の特定収入/(資産の譲渡等の対価の額の合計額+使途不特定の特定収入)
・個別対応方式の場合(c+d+e)
c:課税仕入(課税売上のみ)に係る特定収入×7.8/110(又は6.24/108)
d:課税仕入(共通売上対応)に係る特定収入×7.8/110(又は6.24/108)×課税売上割合
e(調整前の仕入控除税額-( c + d ))×調整割合
・一括比例配分方式の場合(f+g)
f:特定収入に係る課税仕入×7.8/110(6.24/108)×課税売上割合
g:(調整前の仕入控除税額- f )×調整割合
上記のように、非常に複雑な計算を行う必要があります。ご不明な点がございましたら、ゆびすいまでご連絡ください。
なお、国税庁のパンフレットに当該特例の詳細が掲載されております。
税理士法人ゆびすい 福岡支店 西田浩紀