「知」の結集 ゆびすいコラム

2024.07.12

今後の金融所得増税の可能性

今年(2024年)に入り、「社会保険料算定基準への金融所得の反映」に関する報道がされています。一方所得税については、令和5年度税制改正で(多くの金融資産を持つ)高所得者への課税強化が図られたところです。それでは、今後さらなる金融所得への(所得税の)課税強化はされるでしょうか?この記事では、種々の金融所得税制の推移を通じて、今後の金融所得増税の可能性を探ってみたいと思います。
 
①株式譲渡所得税制
以下のように増税と減税を繰り返しています。
・1989年(増税):それまで非課税であった株式譲渡益が、平成元年の1989年に課税対象となりました(申告分離課税 税率26%)。この年に消費税が導入され、また世間はバブル景気にわいており、課税を強化しやすかった年柄とも考えられます。
・2003年(減税):上場株式等の譲渡益には軽減税率(税率10%)が適用され一定の緩和がされました。2003年当時は小泉政権により「貯蓄優遇から投資優遇へ」のスローガンが掲げられており、日本人を投資マインドに振り向ける意図があったと考えられます。
・2014年(増税):軽減税率が終了し現在(税率20%)にいたりますが、代わりに(旧)NISA制度が導入されました。
 
②(店頭取引)FXの税制
2012年に、総合課税(累進課税)から申告分離課税(税率20%)へと変わりました。これは、FX取引には価格変動リスクヘッジの機能もあり、また、分離課税によって、幅広い投資家の参加を促すことが、国民経済の観点から重要であるとされたためです。
 
③仮想通貨(ビットコイン等)の税制
現状、総合課税(累進課税)となっております。もっとも、近年仮想通貨ETFの登場により投資家の参加を促している点に鑑みると、FXと同様に分離課税に変わることで、投資を優遇する税制となっていくのかも知れません。
 
①、②、③から窺えることは、
・さらなる投資家の参加を促したい場合
・投機から投資へマインドが変化したと考えられる場合
に、減税方向の改正があるということです。
また、国や企業としても、老後資金を(元本割れのリスクを伴う)自己責任で賄ってほしいとの思惑があるはずで、金融所得増税は折角醸成した自己責任のマインドセットに水を差します。
以上から考えると、国民の大部分が公的年金に頼らずとも十分老後資金を確保できる状態になってから、金融所得増税がなされるのではないでしょうか?ただ、今後国民が優雅な老後を満喫できる世界がきたとしても、増税は見送ってもらえると嬉しいです。
 
堺事業部 吉田
 
 
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