「知」の結集 ゆびすいコラム

2025.07.04

事実婚と税金

 時代の流れとともに結婚のかたちは多様化しています。

 近年は、実質的に夫婦関係にあるものの、婚姻届を提出せずに法的には入籍していないカップル、いわゆる「事実婚」のカップルが増加しています。内閣府の調査(2022年)によると、日本で事実婚を選択している人は成人人口の2~3%を占めており、事実婚が決して珍しいものではなくなっているのが現状です。そこで今回は事実婚が税金に及ぼす影響について整理したいと思います。

 税法では、配偶者に対するさまざまな優遇措置がとられています。ただし、ここでいう税法上の配偶者とは、民法上の配偶者、すなわち民法の規定により法的な婚姻関係を結んだ配偶者のことを指します。したがって、事実婚によるパートナーは税法上の配偶者として認められず、下記の各税目の優遇措置を受けることができません。

○所得税

 配偶者控除・配偶者特別控除をはじめ、配偶者が支払った医療費控除などの適用ができません。また、個人で事業をされている方であれば、青色事業専従者給与や事業専従者控除の適用が認められず、パートナーに対する労働の対価は一般の給与として取り扱われます。

○相続税

 民法では相続人となり得る者について規定しており、配偶者は常に相続人となる権利を有していますが、ここでいう配偶者も民法上の配偶者に限られるため、事実婚によるパートナーは法定相続人となることができません。しかし、遺贈(被相続人の遺言による財産の譲り渡し)により財産を取得することは可能です。ただしその場合であっても、相続税の配偶者控除の適用を受けることができません。また、配偶者居住権の取得も認められません。

 税法上の配偶者は法律婚を前提としており、事実婚のカップルは優遇措置の多くを享受できないのが現状です。その一方、事実婚のパートナーは国民年金の被保険者の対象となることは可能ですし、社会保険の被扶養者となることも可能です。

 さまざまな制度の現状を知ったうえで、二人にとって幸せな結婚のかたちを選択することが求められる時代になっているのではないでしょうか。

税理士法人ゆびすい 京都支店 M・K

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