「知」の結集 ゆびすいコラム

2025.07.02

園舎の建て替えを控えた場合の社会福祉充実残額

皆様の施設の築年数は何年でしょうか。

高度経済成長期に建てられた園舎の築年数は50年を超え、修繕・建て替えを考えている施設も多いのではないでしょうか。

近年の物価高騰や建築資材・人件費の上昇を背景に、これまで以上に将来的な支出に備えて一定の預金を積み立てておく必要性が高まってきているように感じます。

そんな時に気になるのが社会福祉充実残額です。

社会福祉充実残額とは、社会福祉法人の事業継続に必要な財産を控除した、再投下可能な財産を算定したものです。

社会福祉充実残額が生じた場合には、内部留保とみなされ、地域貢献などを盛り込んだ社会福祉充実計画を作成し、評議員会の承認を得るなどの対応が必要となります。

では、もしその翌年に園舎の建て替えを予定していた場合はどうでしょうか。

使途が明確にあるのに内部留保とみなされ、社会福祉充実計画を作成するのは手続きの手間などを考えると避けたいですよね。

「社会福祉充実計画の承認等に関するQ&A(vol.3)」の問16にこのような記載があります。

『社会福祉充実残額を算定する会計年度の翌年度に新たな施設を建設する場合については、国庫補助等の内示を受け、又は建設会社等との契約が締結され、建設費用が相当程度確定している場合であって、翌年度における当該建物に係る着工時期が既に決定されているとき(これらの事実関係が書面により明らかである場合に限る。)には、当該建設費用のうち、自己資金(寄付金を含む。)相当額を「社会福祉法に基づく事業に活用している不動産等」として、控除して差し支えない。』

つまり、上記の条件を満たす場合には、
翌年度の建設費用のうち、自己資金相当額を事業継続に必要な財産として控除することができ、当初生じてしまっていた社会福祉充実残額が生じなくなる可能性もあるということです。

遭遇する機会はそう多くないかと思いますが、園舎建て替えで忙しくなる時期だからこそ知っておいていただきたい内容です。

税理士法人ゆびすい 名古屋支店 伊藤 和哉

教育・福祉事業