「知」の結集 ゆびすいコラム

2026.05.08

相続放棄をした場合の生命保険金と相続税

近年、実家の空き家問題や借金などの「負の財産」を回避するため、相続放棄を選択する件数は増加傾向にあります。
しかし、生命保険金については相続放棄をしていても受け取ることができ、金額によっては相続税がかかる場合があるため注意が必要です。

民法上、相続放棄は相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述(申立て)することで認められます。

相続放棄をした人は「初めから相続人ではなかったもの」とみなされるため、被相続人の財産や借金などの権利義務を引き継ぎません。

ただし、生命保険金は、原則として受取人固有の財産とされるため、相続放棄をしていても受け取ることができます。

一方で、被相続人の死亡を原因として支払われる生命保険金は、相続税法上「みなし相続財産」として相続税の課税対象になります。

そのため、相続放棄をしたからといって、生命保険金に関する相続税まで必ず免れるわけではありません。また、非課税枠の適用にも制限がある点に注意が必要です。
 

生命保険金の非課税枠は「相続人」が対象

生命保険金には、「500万円 × 法定相続人の数」という相続税の非課税枠があります。
ただし、この非課税枠を利用できるのは、「相続人」が取得した生命保険金に限られます。
そのため、次のような人が受け取った生命保険金については、非課税枠を利用することができず、保険金全額が相続税の課税価格に含まれます。

①相続放棄をした人

→民法上、初めから相続人ではなかったものとみなされるため。

②法定相続人ではない孫や第三者
→相続人に該当しないため(代襲相続人となる場合を除く)。
 

税額計算の具体例

例えば、生命保険金5,000万円を、子2人が受け取るケースを想定します。なお、2人とも相続放棄をしているものとします。

① 生命保険金の非課税枠
生命保険金の非課税限度額は「500万円 × 法定相続人の数」で計算するため、本ケースでは1,000万円となります。
なお、この「法定相続人の数」には、相続放棄をした人も含めて計算します。
ただし、相続放棄をした人自身は生命保険金の非課税制度を利用することができません。

そのため、子2人が受け取った生命保険金については非課税の適用がなく、5,000万円全額が課税価格に含まれます。

②相続税の基礎控除額

3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円が基礎控除額となります。

③課税遺産総額
5,000万円(保険金) - 4,200万円(基礎控除) = 800万円が相続税の課税対象となります。
この800万円を法定相続分に応じて計算すると、各人400万円となり、税率10%を乗じると、各人40万円、合計80万円が相続税の総額となります。
最終的には、みなし相続財産として取得した生命保険金の割合に応じて、各人が相続税を負担することになります。
 
 

まとめ

相続放棄は「負の財産」を回避するための有効な手段です。
一方で、生命保険金は相続放棄をしていても受け取ることができ、金額が大きい場合には相続税がかかるケースもあります。
「相続放棄をすれば税金も発生しない」と考えてしまうと、申告漏れにつながる可能性もあるため注意が必要です。
相続放棄を検討する際は、生命保険金の有無や課税関係も含めて、事前に確認しておくことが大切です。
判断に迷われた際は、ぜひ弊社担当者までお気軽にご相談ください。

 
 

税理士法人ゆびすい 岡山事業部

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