日々の支払いの中で見落としやすいものの一つに「報酬に係る源泉所得税」があります。
弁護士や税理士などの専門家への報酬をはじめ、通訳料や講演料など、支払内容によっては報酬から所得税を差し引き、支払者が税務署へ納付しなければなりません。
「どのような支払いが源泉徴収の対象になるのか」「いくら差し引けばよいのか」と判断に迷うことも少なくありません。
今回は、報酬を支払う際の源泉徴収について、対象となる報酬や計算方法、会計処理などをわかりやすく解説します。
なお、非居住者または外国法人(以下、非居住者等といいます)に対する支払いについては取扱いが異なりますが、今回は居住者に支払う報酬を重点的に説明します。
どのような報酬が対象となるか?
居住者に対するもので代表的なものには、次のようなものがあります。
・原稿料や講演料など
ただし、懸賞応募作品等の入選者に支払う賞金等については、一人に対して1回に支払う金額が50,000円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。
・弁護士、税理士、公認会計士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
・翻訳料、通訳料
・デザイン料
・司法書士、土地家屋調査士等への報酬・料金
・プロ野球選手、プロサッカー選手、外交員などに支払う報酬・料金
・広告宣伝のための賞金
上記のほかにも、所得税法204条には源泉徴収を必要とする報酬等が列挙されています。
なお、「居住者に報酬等を支払ったから必ず源泉徴収が必要」というわけではありません。
例えば、個人の税理士や弁護士へ支払う報酬は原則として源泉徴収の対象ですが、税理士法人や弁護士法人などの「内国法人」に支払う報酬については、源泉徴収の必要はありません。
源泉所得税の計算方法
上記の報酬に係る源泉徴収税額は、次の方法で計算します。
〇原稿料や講演料など、弁護士、税理士等への報酬や、通訳料、デザイン料、プロ野球選手などに支払う報酬・料金
【1回の支払金額が100万円以下の場合】
支払金額 × 10.21%
【1回の支払金額が100万円を超える場合】
100万円までの部分 10.21%
100万円を超える部分 20.42%
例えば、個人の弁護士へ報酬200万円を支払う場合には、
(100万円 × 10.21%)+{(200万円-100万円)×20.42%} = 306,300円
となります。
したがって、報酬200万円の場合には、
報酬額 2,000,000円
源泉所得税 ▲ 306,300円
実際の支払額 1,693,700円
となります。
〇司法書士、土地家屋調査士等への報酬・料金
(支払金額-10,000円)×10.21%
※1万円の控除は、同じ人に対する1回の支払いごとに適用
〇外交員等に支払う報酬・料金
{その月中の支払金額-(12万円-その月中の給与等の額)}×10.21%
〇広告宣伝のための賞金
(賞金等の額-50万円)×10.21%
消費税等について
原則として、消費税等の額を含めた金額が源泉徴収の対象となります。
ただし、請求書等において、報酬・料金等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、その報酬・料金等の額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません。
インボイス開始後もこの取扱いに変更はありません。
報酬の支払先が免税事業者でも請求書等で本体価格と消費税等が明確に区分されているなら本体価格のみを対象とすることができます。
例えば個人税理士の報酬が110,000円(内消費税10,000円)の場合の源泉所得税の計算は次のようになります。
①原則及び本体代と消費税等が区分されていない場合
110,000円×10.21%=11,231円
②本体代と消費税等が区分されている場合
100,000円×10.21%=10,210円
会計処理について
税込経理で上記②の報酬を支払う場合、次のような仕訳となります。
報酬支払時
支払報酬 110,000円 / 現預金 99,790円
/ 預り金 10,210円
源泉所得税納付時
預り金 10,210円 / 現預金 10,210円
源泉所得税の納付について
源泉所得税の納期限は原則として、報酬を支払った月の翌月10日です。
納期特例の適用を受けている場合には、税理士・弁護士・司法書士など一定の報酬について、1月から6月分を7月10日、7月から12月分を翌年1月20日までにまとめて納付することができます。
ただし、すべての報酬が納期の特例の対象となるわけではないため注意が必要です。
納期限までに納付しなかった場合には、不納付加算税や延滞税が課される可能性があります。不納付加算税は原則10%ですが、税務署から納税の告知を受ける前に自主的に納付した場合には5%となります。
なお、過去の納付状況など一定の要件を満たし、法定納期限から1か月以内に自主的に納付した場合など、不納付加算税が課されない場合もありますが、免除要件を満たさない場合、1日でも納付が遅れたら課されるため納付漏れのないのないようにご注意ください。
報酬の支払者には源泉徴収義務があります。
源泉徴収義務のある支払者が、源泉徴収の対象となる報酬を支払う場合には、支払時に源泉所得税等を差し引く必要があります。
仮に、源泉徴収の対象となる報酬について請求書等に源泉所得税額の記載がない場合であっても、支払者は報酬総額から源泉所得税を差し引いた金額を支払い、源泉所得税を税務署に納付しなければなりません。
源泉所得税の記載がないからと満額を支払ってしまうと源泉納付漏れとなり、不納付加算税が課される可能性があるため、支払者側でも源泉徴収対象の報酬ではないか、支払先・支払内容の確認が必要です。
また、非居住者等に対する支払いは、支払いの内容や業務の実施場所、租税条約の適用等により取扱いが異なります。国外で支払っても源泉徴収が必要となる場合があるため、個別の確認が必要です。
判断に迷われる場合には、税理士などの専門家へご相談ください。