「知」の結集 ゆびすいコラム

2009.04.08

税理士の悩み

お客様の税金に関するあらゆるご質問に的確にお応えするのが我々税理士の使命ですが、回答が非常に難しい事案もしばしばあります。

例えば、会社が自社株を買いとる場合の買取価額

事例としては珍しい話ではなく、むしろ最近ではよくある話です。

では何が難しいかと言いますと、「はっきりした答えがない」のです。

我々税理士は、法律の条文、通達、判例等をもとに答えを導き出します。ですが条文などに規定されていない、というより、専門家により解釈が異なってしまうようなあいまいな書き方がされているわけです。

といっても、「いろいろ議論はあるが一般的にはこの価額を用いることが実務上は比較的多い」、という答えは存在します。その実務上の慣例による金額でご質問にお応えさせていただくことが多いわけですが、そうはいっても、他説について全く説明しないわけにはいけません。税務調査等で調査官と意見が分かれてしまう確率もケースによっては十分ありうるわけですから。

そこで、他説についてもご説明させていただくわけですが、お客様の立場からすると混乱するわけです。こうですよ、と言われ、その後、でもこういう可能性もありますよ、と。私が逆の立場であれば、結局どうすればいいかそれを教えて欲しいわけなのに全く違う答えを二つも三つも言われるとイライラしてしまいます。でも我々としては、専門家としてあらゆるリスクに対する説明はしておくべき責任があるわけで・・・ こういったあいまいな論点を残している法律が悪いといってしまえばそれまでですが、きっちり規定されてしまうと、個々の会社の実情にあった柔軟な解釈ができず、ケースによっては一般常識とは遠くかけ離れた処理をせざるを得なくなってしまうこともでてきてしまうでしょう。

あらゆるリスクを説明すれば後は決めるのは会社だからこちらの責任は果たした、なんていう無責任な対応ではお客様から信頼を得ることができません。難しい事案については、しいことをいかにわかりやすく説明できるか、そしてお客様とどう判断すべきか共に考え、悩み、そしてお客様の実情にそった答えを一緒に導き出していこうとする姿勢が我々税理士には必要なのかもしれません。

(税理士:中芝康仁)