「知」の結集 ゆびすいコラム

2009.04.28

新聞記事の見方 ハイブリッド車好調の裏側

 新聞記事によると、ホンダのインサイトが当初の予想以上の好調な販売を続けています。さらに、5月にトヨタが発売予定の新型プリウスは、発売前からインサイトを上回る受注状況とのことです。

 これとは別に、4月25日の日経新聞にハイブリッド車の粗利益は1台当たり30万円という記事がありました。30万円というのは、フィットなどのコンパクトカークラスの粗利益額と同水準とのこと。高級車になると200万円の粗利益があるそうです。

 公表されている販売台数でいくと、粗利益は、2代目プリウスが08年度実績で1000億円前後、インサイトが初年度の販売見込で600億円前後ということになるようです。

 ただし、粗利益というのは、販売価格から生産にかかった原価だけを差し引いた利益です。ここからさらに、流通や販売管理に関連する人件費や減価償却費など(販売管理費用)を差し引いたのが、営業利益(本業としてのもうけ)ということになります。

 トヨタは、この2代目プリウスを40万円以上も値引きすると発表しました。とすると、販売管理費用を差し引くと営業損益では、利益どころか完全な赤字になります。

 5月に発売する新型プリウスは、最低価格が205万円と、予想に反する低価格。日経新聞の記事では粗利益は赤字にはならず、1ケタ台の粗利益率(売上に対する粗利益の割合)は確保するとのことですが、これは、販売管理費用を差し引く前の利益なので、営業利益まで確保できるかとなると、微妙です。

 このことから、トヨタは、ハイブリッド車を広告塔として位置づけているのが見えてきます。

 一方、ホンダのインサイトは、営業利益まで確保できる価格設定であると思われ、経営陣が新たな収益の柱と位置づけているのがわかります。

 両社のハイブリッド車の受注好調が伝えられていますが、粗利益の記事からは、販売戦略の違いが見えてきて面白いですね。

(税理士:白井一馬)