「知」の結集 ゆびすいコラム

2009.07.01

世界経済と所得税の関係

 過去10年間の世界的好景気を思想面で支えたのは、新自由主義といわれる考え方です。

 新自由主義とは、政府が市場に介入せず経済のことは市場にゆだねるべきだという市場原理主義的発想です。これにより金融機関への規制緩和が図られ、証券化ビジネスが急拡大しました。

 新自由主義は、結果の平等よりも、機会の平等を重視するものです。つまりは、自己責任のもと格差は悪いことではないという発想です。

 先進国はこの考え方を税制にも反映させ、所得税の最高税率引下げとフラット化を推進しました。フラット化というのは、超過累進税率の段階を少なくすることです。

 つまりこういうことです。

 所得税には本来、高所得者に高負担をしてもらい、低所得層に富を移すという所得再分配機能があります。これは結果の平等を重視するということでもあります。ところが、最高税率を引下げ、フラット化するということは、格差が生まれるのを是認するということになります。

 日本でも世界の時流にならい、所得税の最高税率引下げとフラット化への改正が行なわれました。

 サブプライムショック後の世界では、この新自由主義という思想自体が見直されようとしています。

 その時代の経済思想を反映するのが税制です。

 今後、日本を含め所得税の所得再分配機能の意義が世界的に見直されるのでしょう。

(税理士:白井一馬)