「知」の結集 ゆびすいコラム

2009.07.16

人を評価することの難しさ

 人事制度については、成果主義が有効だと巷間いわれています。

 導入理由は色々あるでしょうが、おおむね評価の透明性を高める、社員のモチベーションを上げる、同時に人件費の抑制も図る、といったところでしょう。

 しかし、成果主義システムそのものは、社員の人事制度への不満を解決するわけではありません。

 仮にAという評価のモノサシを採用しても、ある社員にとっては、「自分はBの実績を評価してくれないと納得できない」ということになります。ではAとBのモノサシでいいかというと、さらに別の社員にとっては、「いや自分はCの能力を認めてくれないと納得できない、となってしまい、結局社員1人1人を評価するとなれば、それは人事担当者の主観に委ねられることになってしまいます。

 仕事の場でその人の全能力、全知識が発揮されるということはありません。ですから、社員からみれば、与えられた仕事で発揮しているのは、自分の能力の一部に過ぎない。だからそれ以外の部分も評価してくれないとおかしい、となってしまうのです。

 かといって、人事担当者が仕事で評価するのは数値に表れる部分だけです、といっても納得は得られないでしょう。

 結局のところ、年功序列であろうが成果主義であろうが、給料体系についての納得のいく説明の必要性は、同レベルで存在するこということになります。

《1》最終的に全社員が納得する人事制度の構築は不可能である 《2》しかし、それでも社員からの信認を会社が得る必要と義務がある  この矛盾を前提に社員が働き甲斐を感じる会社にするのは、やはりその会社の理念や社会的信用といった目に見えない財産をどう社員が感じるか、というところに尽きると思います。

(参考書籍「ビジネスに『戦略』なんていらない」平川克美 洋泉社) (税理士:白井一馬)