「知」の結集 ゆびすいコラム

2009.09.09

江戸時代の事業承継

 江戸時代は家督相続により家を子孫に残すのが、一族存続の命題でした。これは同時に家業を子孫に継承することでもありました。後継者育成に失敗すれば、家が存続できないという時代でした。

 なにしろ、人生50年の時代、息子が当主として独り立ちできるまで生きていられる保障がありません。早期に後継者を育て上げることは、最重要課題といえました。隠居後も後見人としての役割があります。つまり父親にとって人づくりは死ぬまで完結しない仕事だったわけです。この時代には多くの「子育訓」「父親道」の往来物が残されていて、いかに苦労したかが伺えて興味深いです。

(参考:江戸に学ぶ人育てひとづくり 小泉吉永 角川SSC新書)  今は、必ずしも子供が継ぐ時代ではありません。誰に事業を承継するのか。あるいは事業を存続させるのかしないのか。寿命が延び、事業の承継までに30年の猶予がある時代。事業承継の問題は形は違えどいつの時代にもあります。

(税理士:白井一馬)