「知」の結集 ゆびすいコラム

2009.09.29

介護業界の実態

この不景気で失業者が増えているのは、誰もが知っていることかと思います。7月の全業種の有効求人倍率は0.42という数値になっています。

有効求人倍率とは、求人数を求職者数で割ったもので、雇用状況を示す指標です。つまり、有効求人倍率が1だと理論的には、1人につき1つは仕事のニーズがあるということになります。

ということは、現状では1人に1つも仕事はなく、仕事のニーズが不足している状況だということがわかります。

ところが、介護業界では異なっていて、7月の有効求人倍率は1.31で、全業種の雇用状況と比べると、3倍以上の求人があります。どちらかというと、人手不足だということが言えるでしょう。

それならば、失業者が介護の仕事に就けばちょうどいい数値になるのではないかと思います。数値の上では、そうなるでしょう。

しかし、実際はそうならない現状があります。なぜならば、色々な問題があるからです。

介護業界での問題は、主に2つあります。

?賃金が低い ?人手不足である まず、1つ目は、賃金が低いこと。2000年に介護保険が導入されたものの、2003年と2006年に介護報酬が減額され、賃金が減りました。

そして、2つ目は、人手不足であること。これは、賃金が低くなったため、離職していった人が増えました。また、介護の仕事は重労働で、思った以上に大変みたいです。おむつ交換も赤ちゃんとは違い、難しいそうです。そのため、離職率が高いのです。離職によるさらなる人手不足のため、もっと大変になる悪循環が発生しています。

最近では、働く気もないのに、ヘルパーの資格だけが目当てで介護の業界に入り、資格取得後にすぐやめる人もいて、困っているようです。

このような問題があるため、介護者の離職率は18.7%だそうです。そのため、人手不足になり、有効求人倍率は高くなっているのです。

ちなみに、介護者の離職理由の上位4つは以下の通りです。

「仕事内容の割に賃金が低い」 58.3% 「人手が足りない」 51.0% 「業務に対する社会的評価が低い」 41.3% 「身体的負担が大きい」 38.2%                     (出所:介護労働センター)
だから今、各地ではこんな介護業界を変えようと、様々な活動があります。また、政府も報酬を月額4万円引き上げるという政策を掲げています。しかし、賃金だけでなく、他の待遇を改善することも必要です。今後、どのように改善するかは、民主党の課題の1つでしょう。

フィリピン人やインドネシア人の介護士を受け入れているというのもありますが、日本人の雇用が確保できていないのに、どうなのでしょうか。それほど、介護者の人手不足が深刻だということなのでしょうか。

2025年までには、介護者があと約100万人必要だと言われていますが、外国の方が占める割合は一体どの程度になるのでしょうか。文化や言葉の壁もありますし、日本人同士が一番いいのでしょうが、なかなか難しいかもしれません。

食生活の変化や医療の進歩により寿命が伸びたことにより、介護の問題が生じました。介護者の労働環境の改善も大事ですが、介護が必要にならないための予防にも全力を注ぐ必要があるように思います。

(上田純也)