「知」の結集 ゆびすいコラム

2009.11.13

時間単位の年次有給休暇

年次有給休暇は、現在は1日単位でしか与えることができません(労使が合意した場合は半日単位でも付与可能)。しかし、平成22年4月1日に改正労働基準法が施行され、労使協定を結ぶことによって時間単位の年次有給休暇を与えることが認められるようになります。「時間単位で年休を与える」という言葉だけを聞くと、休みが取りやすくなる便利な制度という印象が強いと思いますが、いろいろとルールがあるので注意が必要です。

まず、大前提として時間単位の有給休暇の付与について労使協定を結ぶことが必須条件です。

したがって、労使協定を結ばなければ時間単位の有給休暇は従来通り認められません

その労使協定の中には、最低限つぎの4つのルールを盛り込まなければいけません。

①対象職員の範囲 時間単位年休の対象となる職員の範囲を決めておきます。仮に一部を対象外とする場合は、「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。ただし、年休の利用目的によって対象外にすることはできません。

②時間単位年休の日数 時間単位で付与できる年次有給休暇の日数は年間「5日」を限度と定められています。前年度から繰り越された年次有給休暇がある場合は、繰り越し分も含めて5日以内の範囲となります。

③時間単位年休1日の時間数 時間単位年休を付与する場合は、何時間で1日分の年次有給休暇に相当するのかを定めておく必要があります。例えば、1日の所定労働時間が7時間30分の場合は、30分端数が発生してしまいます。そのような場合は、端数を1時間に切り上げて「時間単位年休8時間分=1日分」とします。

④1時間以外の時間を単位とする場合の時間数 時間単位年休は、必ずしも「1時間」を単位とする必要はありません。最小単位を「2時間」や「3時間」と設定して付与することもできます。その場合は、単位とする時間数を労使協定に定める必要があります。

以上4つは、最低限労使協定に定めるべきルールなので、実際には他にも申請手続き等詳細を定める必要があると思います。

職員の皆様にとっては便利な制度かもしれませんが、管理する側にとってはしっかりと制度を理解して残日数・残時間を把握していかねばならない手間のかかる制度と言えます。

導入を検討する場合は、上記のルール設定や管理が煩雑となることも含めて、正しく運用することができるかどうかを事前に熟考したうえで労使協定を締結されることをお勧めいたします! 社労事業部 川本祐介