「知」の結集 ゆびすいコラム

2011.02.21

宗教法人をめぐる税務

先日、某有名寺院の住職が国税局より 3年間で2億円の所得申告漏れを指摘されました。

新聞、テレビ等で取り上げられたので御存じの方も多いかと思います。

そこで、宗教法人をめぐる税務について少し触れたいと 思います。

?住職とはサラリーマンである 世間では、先に述べたようなニュースが流れるたびに、 住職はまったく税金を払わずに生活しているかのごとく「坊主丸儲け」などと揶揄するわけですが、実際は異なります。

課税されないのは、布施などを宗教法人の収入として計上している場合です。

また、「法人税」が課税されないのであって、寺から支払われる給与には、我々サラリーマンと同じように「所得税」が課税されています。

このため、寺からもらう給与以外に収入がある場合は、名目が「布施みたいなもの」であろうが課税対象となりますので、所得税の確定申告が必要です。

?文化財の売却 新聞報道などでは書かれていませんでしたが、宗教法人が所有する「文化財」や「絵画」を売却してお金に換えた場合には、税金はかかるでしょうか? 答えは、法人税はかかりませんが、消費税については課税取引となります。

個人所有のものを売却すれば、単発の取引であれば「事業として行われていない」として消費税の課税取引とはなりません。

しかし、法人が売却すれば、たとえ単発の取引であっても「法人が行う取引はすべて事業として行われる」と規定されていますので、消費税の課税取引となります。

ただし、現行法ではただちに消費税を納めなければならないのではなく、翌翌年度からの納税義務を負うだけとなっています。

ほかにも、宗教法人には様々な税務上の恩典が存在しますが、宗教法人格を悪用して租税回避が行われているのも事実です。

宗教法人改革は長く行われていません。

いつメスが入っても慌てなくていいように、日常の経理処理から今一度見直されてはいかがでしょうか。

(矢部恭章)