「知」の結集 ゆびすいコラム

2011.10.18

相互贈与

 贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。

 このことから考えると、次の場合は贈与税を納める必要があるのでしょうか?  例えば、AさんがBさんに200万円相当の絵画をプレゼントして、その後BさんがAさんに200万相当の壺をプレゼントのお礼として渡したとします。

 この場合AさんからBさんへのプレゼントの際にAさんの財産は200万減ることになります。

 しかし、Bさんからお礼を受け取ることで財産が200万増えることとなり、プレゼントとお礼をトータルで考えるとAさんの財産の増減は0と考えられます。

 BさんもAさんと同様に、プレゼントを受けることとお礼をすることによりトータルで考えると財産の増減は0となります。

 この場合の贈与税は次の?、?のどちらになるのでしょうか?  ?Aさん、Bさんの財産はそれぞれ増えたわけではないのだから、税金はかからない。

 ?AさんからBさんへのプレゼントおよびBさんからAさんへのお礼それぞれが贈与税の課税の対象となる。

 普通に考えるとAさん、Bさん共に財産の増減を相殺すれば得をしたわけではないので、税金を取られることはおかしいという考えになり、?を選びたくなったりしますよね。

 しかし、贈与税に関する法律が記されている相続税法では贈与による利益と贈与による損失とを通算する旨の規定は設けられていません。

 つまり贈与に関する財産の増減をトータルで考えるのではなく、AさんからBさんへのプレゼントを一つの贈与、BさんからAさんへのお礼を一つの贈与として、それぞれ贈与税を納める必要が出てきます。

 ただし、みなさんの身近で行われるもので相互贈与に該当するお歳暮などは、社交上の必要によるもので社会通念上相当と認められる範囲で、贈与税は課税されません。(相続税法基本通達21の3-9より)  贈与税はみなさんの生活での何気ないやり取りからも発生しうる税金なので注意が必要ですね。

(水野上 崇)