「知」の結集 ゆびすいコラム

2013.12.13

宮崎アニメへのいざない

ジブリ作品は今や日本だけに留まらず世界中に受け入れられています。

また、未だに再放送すれば視聴率20%を超える、いわゆるお化け番組で有り続けています。

キャラクタービジネスにも率先して参戦し、中でもトトロの持つキャラクター性の強さは特別なものがあります。

ジョンラセター監督作品のトイストーリー3にもトトロが登場し、日本公開時にとても話題になりました。ラセタ―監督ももちろん宮崎監督のファンであることを公表しています。

となりのトトロは1988年に劇場公開され、同時上映には高畑勲監督の『火垂るの墓』でした。両方の内容をご存知の方は内容の差に驚かれることでしょう。

作曲を久石譲が手掛け、作詞を宮崎駿監督自身がしたオープニングテーマの『さんぽ』は、今や教科書に掲載され長く愛されていることを証明します。

宮崎アニメが長く好まれる理由の一つに、大人になってから見るとさらに発見があることがよく挙げられます。

トトロで言うと、妹のメイちゃんの成長譚と見て取れます。お姉ちゃんに付きっきりだったメイちゃんが最後には自分よりさらに年齢が下の子供たちの相手をすることで、母性本能と育児への責任を自覚して行く、という流れが実はこの物語には隠れています。

近年の同監督作品の崖の上のポニョでも、メイちゃん同様に駄々っ子だったポニョ自身がボートに乗った赤ん坊を自分なりにあやすことで母性に目覚めるというシーンがあります。

この映画では尺を取り、1人の少女の成長過程を丁寧に見せる演出を取りましたが、トトロではどこにそんなシーンがあるのでしょうか。

実はエンディングのスタッフロールが流れるわずかな静止画の中にメイちゃんが子供をあやしているシーンがあるのです。

演出のやり方として、同じ様なことを伝えるにも全く別の方法があり、それぞれに好みが分かれます。トトロでは若いクリエイターが観客に思いが伝わることを信じて数秒に思いを乗せたのに対し、ポニョでは老練なテクニックでじっくりと思いを伝えています。

またこの解釈も一個人がそう思う解釈であり、一シーンごとに多種多様な解釈が存在します。

それもまた宮崎アニメの面白さの一つです。

峯岡