「知」の結集 ゆびすいコラム

2015.03.25

結婚・子育て資金の一括贈与をする前に考えてほしいこと

今年の1月1日から相続税の基礎控除が引き下げられるなど、何かと話題の相続税。

相続税と切っても切り離せないのが贈与税ですが、贈与税についても様々な改正が行われています。

その一つが、祖父母や親が子どもや孫に結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置の創設です。

この制度は、来月4月1日から平成31年3月31日までの間に20歳以上50歳未満の子や孫に1人につき1,000万円(結婚関係費用については300万円)までを非課税とする制度です。

また、この制度創設に伴い大手信託銀行4行から「結婚・子育て支援信託」というサービスも4月から始まります。

「結婚・子育て支援信託」では、煩わしい手続を一手に引き受けてくれ、税務署との手続も無料で代行してくれるというものです。

さらに、資金を引き出すまでに預けたお金は国債などで運用されるので配当なども得られるとのこと。

なんとも嬉しいサービスです。

ただ、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置を利用する前に、本当にその方法が得策かどうかということをよく考えて欲しいと思います。

そもそも「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるために贈与を受けた財産のうち、通常必要と認められるもの」については、贈与税の対象となりません。

「通常必要と認められるもの」とは、「被扶養者の需要と扶養者の資力その他一切の事情を勘案して社会通念上適当と認められる範囲の財産」を指します。

具体的にいくらと決まっているわけではないので、線引きが不明確ですが、「結婚式の費用を親が負担して贈与税がかかった!」という話を私は聞いたことがありません。

さらに結婚・子育て資金の一括贈与は、同じ信託方式をとる教育資金の一括贈与の非課税措置と異なり、贈与者が死亡した場合、その残額が相続税の課税対象となる点も要注意です。

一気にまとまった多額の現金を贈与をしたい!という強い願望があれば話は別ですが、そうでなければその都度、必要な分だけを贈与していく方が得策な場合もあります。

多額の現金を孫や子に贈与してしまい、生活費に困ってしまったとなれば元も子もありません。子どもや孫のためを思って贈与を考えてくれることは大変有難いことですが、自分たちの老後も楽しんで欲しいと思います。

新しい制度やサービスにすぐに飛びつくのではなく、内容をしっかりと理解した上で家族みんなが幸せになる相続税対策を心掛けたいものです。

小畑 直子