「知」の結集 ゆびすいコラム

2016.03.02

社会福祉法改正セミナー

 先日、福岡支店にて社会福祉法改正セミナーが開催されました。
社会福祉法人にとって最も関心の高い研修テーマだけあり、九州各地から多くの方々にご参加いただきました。
ありがとうございます。
今回は、研修での内容について振り返りたいと思います。

社会福祉法等の一部を改正する法案としては大きく分けて、

(1)行政の関与の在り方
(2)経営組織のガバナンス強化
(3)事業運営の透明性の向上
(4)財務規律の強化(内部留保の明確化・社会福祉事業等への計画的な再投資)
(5)地域における公益的な取り組みを実施する責務
の5つの概要があります。

中でも(2)の経営組織のガバナンス強化について経営者の関心が高かったので説明していきます。

経営組織の在り方について現在と改正後で比較していきますと、

○現在の理事会(理事長・理事)
→理事会による理事長・理事に対する牽制機能が制度化されていない。
理事・理事長の役割や権限の範囲が明確でない。

○今後の理事会(理事長・理事)
→理事会を業務執行に関する意思決定機関として位置づけ理事・理事長に対する牽制機能を働かせる理事等の義務と責任を法律上規定する。
○現在の評議員会(評議員)
→評議員会は任意設置の諮問機関であり、理事・理事長に対する牽制機能が不十分である。

○今後の評議員会(評議員)
→評議員会を法人運営の基本ルール、体制の決定と事後的な監督を行う機関として位置づけ必置の機関とする。

○現在の監事
→監事の理事・使用人に対する事業報告の要求や財産の調査権限、理事会に対する報告義務等が定められていない。

○今後の監事
→監事の権限・義務(理事会への出席義務・報告義務等)、責任を法律上規定することになる。

といった様に社会福祉法改正によると、各組織の存在意義が明確化されていくことになる。

また、今回の改正で注目すべきは評議員会の重要性であります。

具体的に評議員の権限を列挙しますと、

●理事・監事・会計監査人の選任・解任
●報酬支給基準の決定
●計算書類の承認
●定款の変更
●合併契約の承認
●損害賠償責任の一部免責
●解散
が挙げられます。

評議員の権限が理事・監事・会計監査人の選任・解任まで及んでいるのは評議会の重要性を物語っているのではないでしょうか。

次に、その評議員の資格制限についてですが、
評議員になれない者として、役員又は当該社会福祉法人の職員や法人等が挙げられています。現在、理事と評議員の兼職は可能でありましたが、今後は兼職は認められなくなるという事です。
また、評議員としての識見を有する人材とは、社会福祉事業や学校などの公益的な事業の経営者・社会福祉に関する学識経験者(大学教授等)などが挙げられておりますが、なかなかその様な人材を確保することは難しいのではないでしょうか。
その際には、行政や社会福祉協議会による地域における評議員の確保を支援する仕組みを整備する予定とのことです。
最後に、評議員の選任方法についてですが、
法律上、評議員の選任方法は定款に定め、所轄庁の認可が必要とされています。それ以外は基本的に社会福祉法人が定めた方式で評議員を選任できることになっています。

平成29年4月1日開始の制度ですが、それ以前に定款変更認可申請・新評議員の選任など準備しておくことはたくさんありますので、各法人様で早めの対応を心掛けておきましょう。

西山 祥司

 

社会福祉法改正