「知」の結集 ゆびすいコラム

2016.03.04

医療機関の損税問題

 平成29年4月から消費税率が10%にあがり、食料品等については軽減税率が導入されることとなってます。


消費税の改正に当たって、食料品などの軽減税率に関する報道は頻繁にとりざたされていますが、医療に関する消費税については特段話が出ることはありません。


それは、社会保険診療については消費税導入当初から非課税とされており、昨今の税制改正にも非課税の取扱いを変更するような案は出てきていない状況だからです。


この非課税ということが、実は医療機関経営に大きな影響を及ぼしています。いわゆる「損税問題」というものですが、簡単にいうと、医療機関が医療材料などを仕入れたときに支払う消費税が払いっ放しになってしまっている、ということです。


株式会社などであれば、仕入に係る消費税は税務署から返してもらうことができます。(厳密には、売上に係る消費税と相殺します。)

しかし、医療機関では、売上のほとんどが非課税であることから、売上に係る消費税がなく、仕入に係る消費税が相殺できない状況になってしまっています。

これにより、医療機関の消費税負担は重くなり、経営を圧迫することになっています。医療機関の運営を考慮して、消費税率の改定時には、診療報酬のプラス改訂という形で、国は対応してきました。しかし、度重なるマイナス改定があった経緯を踏まえると、消費税率の増税分が、本当に診療報酬に上乗せされているかは疑問が残ります。


日本医師会からは、解決策として
①免税制度の導入(0%税率の導入)
②軽減税率の導入(医療も課税だが軽減税率とする)
③普通税率の導入と医療に係る消費税相当を所得税から控除する給付付き税額控除の導入
などを提案しています。


また、厚生労働省からの税制改正要望においても、医療機関の消費税のあり方について明確化を図ろうとする表明がなされています。
 医療や介護は、国民にとってなくてはならないもの。医療機関の経営の安定化を図るためにも、消費税の「損税問題」の解決が望まれます。



土屋 英則

 

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