2016.10.21
最近、生前に行う相続税対策がクローズアップされていますが、相続が発生した後に受けられる制度もあります。
これは、「相続税の取得費加算の特例」と言いまして、相続により取得した土地、建物、株式などを一定期間内に譲渡した場合、譲渡所得の計算上、相続税額の一定金額を取得費に加算することができ、所得税や住民税の税負担を軽減できるというものです。
この特例を受けるためには、要件があります。
1、相続や遺贈により財産を取得した者であること。
2、その財産を取得した人に相続税が課税されていること。
(相続開始のあった日から3年10カ月以内に譲渡していること。)
譲渡所得の取得費に加算できる金額は、平成26年12月31日以前の相続か、平成27年1月1日以後の相続で計算方法が異なり、優遇を受けられる金額が少なくなるように改正されました。
改正のポイントは、取得費加算される相続税額が、従来相続したすべての土地に対応する相続税額であったのに対して、改正後は、相続した土地のうち、譲渡した土地のみに対応する相続税額になったことです。
それでは、上記の内容を具体的な例で説明します。
1、相続人Xは、父親の相続(相続人はXのみ)で以下の資産を相続しました。
①土地A 相続税評価額5,000万円(父が取得した時の価格4,000万円)
②土地B 相続税評価額2,000万円(父が取得した時の価格1,000万円)
③その他財産 3,000万円
④合計 ①+②+③=10,000万円
∴相続税 1,220万円
この時、譲渡費用(仲介手数料等)が250万円かかりました。
{6,250万円-(4,000万円+250万円)}×20%=400万円
4、平成26年12月31日以前の相続の場合
1,220万円×(5,000万円+2,000万円)/10,000万円=854万円
※計算のポイントは、①加算金額の分子が土地という区分の合計で計算する点です。
5、平成27年1月1日以後の相続の場合
1,220万円×5,000万円/10,000万円=610万円
{6,250万円-(4,000万円+250万円+610万円)}×20%=278万円
※計算のポイントは、①加算金額の分子が譲渡した土地の割合のみで計算する点です。
取得費加算の特例を受けるには、確定申告を行う必要があり、後からのやり直しができません。
では、相続が確定していない時期に譲渡した場合はどうなるのでしょうか?
このような場合には、更正の請求を行うことができます。
提出期限は、相続税の期限内申告書を提出した日の翌日から2カ月以内です。