「知」の結集 ゆびすいコラム

2017.11.13

法人成りした時の税務上の注意点

今まで個人で事業を行っていた人が法人成りをする場合、個人と法人は、別人格として考えるため、個人が持つ資産を法人にそのまま引き継ぐことが出来ません。

そのため、個人から法人に売却することが一般的になります。このとき、①個人の譲渡所得、②法人の消費税の2つに留意する必要があります。

①個人の譲渡所得
 個人から法人へ含み益のある資産売却を行った際、個人で譲渡所得が発生します。実務上、個人事業のときに使用していた個人所有の機械装置といった固定資産や棚卸資産資産は簿価で譲渡しても含み益がほとんどないことが多いため、譲渡益は発生しませんが、含み益がある土地を移す場合には課税が発生します。

 一方、含み益を実現させないように土地を個人から賃貸するという手段がありますが、こちらは借地権の認定課税の論点を押さえておく必要があります。

②法人の消費税

 法人は、個人から資産を購入しますが、土地以外の資産は消費税の課税対象となるため、多額の消費税を納める一方で売上がそれほど多くない場合には預かる消費税が少なくなり、消費税が還付になることがケースがあります。しかし、還付を受けるためには当然、法人が消費税の納税義務者であることが条件になります。法人と個人は別人格のため法人が設立当初から納税義務者となるためには自ら課税事業者を選択するか、資本金を1,000万円以上にするなど所定の要件を満たす必要があります。法人成りの場合には資本金を多額にすることは稀ですから自ら課税事業者となると届出書を提出する必要があることに留意が必要です。なお、この届け出を行った場合、納税義務の期間は2年間なのですが、100万円以上の固定資産(調整対象固定資産といいます)を取得した場合、納税義務期間が2年間から3年間となってしまうという論点もあります。法人成りのケースでは、ほぼ間違いなく該当するため、法人成りのシミュレーション時から消費税の納税義務を選択して還付を受けるほうが有利なのかどうか慎重に検討することが必要です。

最後に法人成りは、他に設立に関する登記や税務や社会保険の届出書等の提出もあるため、スケジュールや出し忘れに注意しましょう。

堺事業部 吉村 隆宏

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