「知」の結集 ゆびすいコラム

2017.12.27

今話題の事業承継税制とは

 中小企業の社長はほとんどの場合、自社の株式を保有しているかと思います。

そのような場合、社長は会社の経営者でもありオーナーでもあります。

「事業承継」という言葉は皆さんよく耳にすると思いますが、オーナー社長は事業承継にあたって次の2つのことを行わなければなりません。

まず一つ目は、会社の経営を引き継ぐこと。
簡単にいえば社長の交代です。

役職を変更するだけなら簡単かもしれませんが、経営のノウハウ等を継承することは一筋縄ではいかない部分です。

そして2つ目が会社の株式を引継ぐことです。

自社株式の名義を変更するだけと考えてしまいがちですが、自社株式も立派な財産です。これを後継者に渡そうと思うと贈与税や相続税等の納税の問題が生じてきます。

実際、この税負担が問題となって事業承継が進まないケースも多くみられます。

近年、人材不足で後継者不在となっている会社も多い中、納税の問題が事業承継の大きな障壁となっています。

その問題を少しでも改善する為、平成21年に政府は新たな制度を用意しました。

それが「事業承継税制」です。

細かい要件や内容は割愛しますが、この事業承継税制は先代の経営者から後継者に自社株式を贈与又は相続する際の税負担を軽減するもので、最大で発行済株式数の2/3までを対象として、相続税の80%猶予できるものとなっています。

一見とても良い制度のように思いますが、これまでは制度を利用するための要件が厳しいことが問題となっていました。
また、たとえ一時点において要件を満たした場合でも、5年以内に要件に該当しなくなると、猶予税額の一括納付を求められ、その際には利子税も賦課されることになっています。

このようなリスクもあることで、事業承継税制を活用する法人はこれまであまりありませんでした。

積極的な制度利用を促すため、平成27年1月1日以後の贈与又は相続からは制度の一部が改正され、少しは要件も緩和されましたが、それでも制度の利用は進みませんでした。
そのような状況を改善する為、政府は平成30年度の税制改正でさらなる緩和を検討しているようです。

新聞等の報道によると、最大で発行済株式数のすべてを対象に税額を100%猶予するような制度になるのではないかとの予想もされています。

いずれにしても事業承継税制がさらに利用しやすく、かつ猶予上限が拡大すれば中小企業の事業承継の流れは大きく変わるのではないでしょうか。

平成30年の税制改正大綱は12月14日に発表予定です。

どこまで制度の要件が緩和され、猶予上限が拡充されるのか注目したいと思います。

相続専門部 中村圭吾

事業承継