「知」の結集 ゆびすいコラム

2018.06.27

ペットに遺産を相続させることはできるのか

近年、核家族化や少子高齢化が進み、「ペットも家族の一員である」という風潮が強まる中、ペットに何かしらの財産を相続させたいと考える人も中にはいるでしょう。最近でも紀州のドン・ファンこと実業家の故野崎幸助氏が約50億円ともいわれる遺産を愛犬イブちゃんに全て相続させると生前話していたとして話題になりました。

実際、ペットに遺産を相続させることは可能なのでしょうか。日本の民法では動物は「動産」として取り扱われます。遺産を相続することができるのは、相続「人」に限られるため動物であるペットに遺産を相続させることはできません。むしろ、ペットも動産であるため相続財産の一部になります。
 
それでは、ペットに遺産を残してあげる方法はないのでしょうか。ペットに直接相続させることはできませんが、相続させるのと同様の効果を得る方法があります。それが負担付遺贈です。負担付遺贈とは、財産を渡す代わりに一定の義務を負担させる遺贈をいいます。たとえば、ペットが亡くなるまで面倒をみることを条件に現預金500万円を遺贈するといった内容を遺言書で記載します。
ただし、負担付遺贈を行う場合、注意すべき点が3つあります。
 
まず、債権放棄することができるという点です。負担付遺贈の場合、遺言者の一方的な意思表示であり、遺贈を受ける者の承諾は要りません。
 
次に、遺贈を受ける者がペットの面倒をみているか分からないという点です。極端な話、ペットの面倒をみると約束したものの飼育を放棄していても誰も分かりません。それにもかかわらずペットの面倒をみていない場合でも遺贈は有効なのです。そのため信頼できる遺言執行人を遺言書の中で指定し、自分の代わりに定期的にペットの面倒をみているか確認してもらいます。もし、遺贈を受ける者がペットの面倒をみていないような場合には、ペットの面倒をみるよう催告し、それでもいうことをきかない時は、遺贈自体の取り消しを家庭裁判所に請求することができます。
 
最後は、遺贈が他の相続人の遺留分を超えている場合、相続争いの火種の一つとなる可能性があるという点です。遺留分とは、民法で定められている一定の相続人が最低限相続できる財産をいいます。負担付遺贈が他の相続人の遺留分を侵害している場合、相続人は遺留分の減殺請求をすることができます。この場合、遺贈を受ける者の財産が減少することもあります。こうした事態を避けるためにも、他の相続人の遺留分に配慮して遺言書を作成する必要があります。
 
また今回紹介した負担付遺贈以外にも負担付死因贈与契約やペット信託でペットに遺産を残す方法もあります。一番大切なことは愛する家族やペットに幸せな生活を送ってもらうことではないでしょうか。自分の想いを伝えるためにも、遺言書の作成を是非ご検討下さい。
 
小畑直子
 
 
 
相 続